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震災や環境対策、アジアで国を超えた協力の仕組みをつくろう

天児慧(あまこ・さとし)/早稲田大学大学院教授(中国政治外交)

2014年07月15日

天児慧さん

 日中、日韓の対立が深まっている。それは、自らの目先の利益の実現には、一時的に効果があるかもしれない。しかし結局は、アジア地域を不安定にし、互いに損失をもたらす。各国の指導者は、刺激的な言動を互いに抑え、これ以上の対立の回避に尽力し、積極的に関係改善を図り、相互協力を進めなければならない。

AJWフォーラム英語版論文

 では、相互の信頼を回復するにはどうしたらいいいか。領土問題では、日、中、韓に重大な見解の相違が存在する。それが嫌日、嫌韓、嫌中感情を生み出し、相互の不信を深めている。さらに政府の指導者が、相手に対する反感を助長し、何らかの利益を引きだそうとしていることが懸念される。互いの言い分を主張し合うのではなく、まずは、領土をめぐる現状を動かさないことが大事だ。

戦後70年、歴史問題で新たな声明を

 歴史問題では、過去の条約や声明による合意を踏まえながらも、日本は、来年の第2次大戦終結から70周年を機にポジティブな声明を新たに出し、この問題をおさめる努力をすべきだ。その声明を中国、韓国も評価するという形になれば、状況は改善に向かうだろう。

 日、中、韓の学者が、「相互不信」を研究するプロジェクトを組織し、その成果を公表し、相互理解を促進することも重要だ。シンクタンクや研究者らがフォーラムを設置し、政府もそれを少なくとも黙認し、願わくば耳を傾ける状況が生まれればいい。

私は、アジアにおいて「非伝統的分野における安全保障」の仕組みを設置することを提案したい。たとえば、この地域は、スマトラ大地震、四川大地震、東日本大震災など巨大地震にしばしば見舞われる。中国の大気汚染や鳥インフルエンザは国境を超え、周辺国に深刻な影響を及ぼす。市民レベルでの協力は始まっているが、地域の協力態勢は極めて弱い。各国政府が、民間と手を携え、災害、病気、環境などに対処する新たな安全保障の仕組みをつくることを提案したい。

      ◇

 あまこ・さとし 1947年生まれ、早稲田大学教育学部を卒業し、東京都立大学で修士号、一橋大学で博士号を取得した。琉球大学、共立女子大学、青山学院大学をへて早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授。近刊に「中華人民共和国史 新版」(岩波新書)、「日中対立:習近平の中国をよむ」(ちくま新書)など。