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日中環境協力 上から目線の発想やめよ

明日香寿川(あすか・じゅせん)/東北大学教授(環境エネルギー政策論)

2014年08月29日

明日香寿川さん

 中国の大気汚染、特に微小粒子状物質PM2・5などの越境汚染について、日本の政治家の反応は分かれる。「中国はけしからん。厳重に抗議すべきだ」と「日本が援助し解決すべきだ」というものだ。

AJWフォーラム英語版論文

 これらはいずれも「上から目線」だと思う。越境汚染により他国に悪影響を与えているという認識は中国にもある。しかし、自らが苦しんでいる中国の人々は、 「けしからん」と言われても「分かっている」という反応しかしようがない。原発事故を外国人に「けしからん」と言われても、多くの日本人の心に深く響かないのと同じだ。

 また、中国の大気汚染問題は、日本が援助を行って解決するような単純な問題ではない。技術がすべてを解決する問題でもなく、日本の技術の優位性が必ずしも高いわけでもない。

 円借款による援助が終わり、日中の環境協力の舞台は「会議」になりつつある。今年4月、韓国で開かれた日中韓環境相会議では、中国の大臣が出席せず、日中 の二国間会議も開かれなかった。背景には、現在の政治的緊張関係の影響と、たとえ会議をしても建設的な議論にならないという判断が中国側にあったのだろう。

 十分であるかの判断は難しいものの、中国は、日本など先進国では想像できないような対策をすでにやっている。数年前には各地で、省エネ目標 達成のために強制的に電気や熱の供給が止められた。北京では自動車のナンバープレート取得は抽選制であり、日本では産業界の反対で阻止された温暖化ガスの 排出量取引制度も、七つの大都市圏で導入された。大気汚染や温暖化の元凶である石炭火力発電所は、日本で新設が計画される一方で、中国では多くの大、中都 市での新設は原則禁止となりつつある。その結果、2014年上半期の石炭消費量の増加率は、1980年代に改革開放で高度成長が始まって以来、初のマイナスとなった。

 環境協力は、共通の敵に立ち向かうという名目のもと、かつて欧州で東西冷戦の終結に貢献した。それをアジアで実現するためには、まず各国が同じ目線に立つことが必要だ。

 環境問題の多くはエネルギー資源問題である。日中双方にとって、エネルギー開発や海洋の共同利用は大きな経済的メリットがある。つまり、環境問題と他のイ シューとを戦略的に結びつけるのだ。こうした形で日中が環境協力を進めれば、ともにメンツを失わない形で、緊張緩和を進めるための糸口になりうるだろう。

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 あすか・じゅせん 東北大学東北アジア研究センター教授。1959年、東京生まれ。東京大大学院工学系研究科博士課程修了。専門は環境エネルギー問題の政治経済学、中国の環境問題。