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対北で日米韓 糾弾しつつ対話の道も探れ

伊豆見 元 (いずみ・はじめ) 静岡県立大教授(東アジア国際政治)

2010年06月23日

 3月26日の韓国海軍哨戒艦沈没事件から3カ月。現在の焦点は国連安保理での協議にある。韓国と、その韓国を全面的に支持する日本と米国は、北朝鮮の魚雷攻撃を非難し、二度と北朝鮮がこうした行為を繰り返さぬよう強く促す国際社会の断固たるメッセージを発することを求めている。

 だが、これまでの経緯を振り返る限り、そうした内容の「決議」や「議長声明」の採択は、不可能に思われる。安保理の常任理事国である中国とロシアは、今回の沈没事件が北朝鮮の魚雷攻撃によるものであるとの明確な証拠は存在しない、との立場をとっていると考えられるからだ。

 したがって、中ロ両国は、北朝鮮を直接名指しで非難することはもとより、たとえ「間接的な非難」でも、安保理の文書に明記されることには反対し続けるであろう。

 中ロ両国が受け入れられる「国際社会のメッセージ」は、以下の3点に限定されることになると言ってよい。(1)韓国の哨戒艦が沈没し46人もの犠牲者を出したことは大変不幸な事件(2)沈没事件で南北朝鮮間に緊張が高まりつつあることは遺憾(3)朝鮮半島の平和と安定が保たれることを強く望む。

 しかし、このような内容の「決議」や「議長声明」にとどまるのであれば、韓国はもとより米国にも相当な不満が残ることになる。両国内で、そうしたメッセージしか採択し得なかったことに対する批判の声があがることは避けられまい。圧力に押されて、米韓両国が北朝鮮に独自の強い措置をとるようになることも十分に考えられる。韓国は、これまで留保してきた北朝鮮向け軍事宣伝放送などを開始するかもしれない。米国は、金融制裁の強化などと共に、北朝鮮をふたたび「テロ支援国家」に指定する可能性がある。

 そうした措置が実行に移されると、北朝鮮は強硬な対応に出てくることも考えられる。韓国に対しては、すでに彼ら自身が強く示唆しているように、宣伝放送用拡声機に銃撃を加えてくることが想定される。それは韓国の反撃を呼び、朝鮮半島では軍事的衝突がエスカレートする危険性が頭をもたげてくるだろう。米国に対しては、「対米核抑止力」の強化という名目で、3回目の核実験を実施することで応える可能性があるし、さらに踏み込んで、米国が最も懸念する第三者への核技術や核物質の譲渡をほのめかすような行為に出てくるかもしれない。それは確実に朝鮮半島の軍事的緊張を高め、世界的範囲での核拡散の危機をもたらすことになる。

 われわれは危機的状況を避けるために最大の努力を傾ける必要がある。一方で日米韓を中心に北朝鮮を厳しく糾弾し、米韓両国は対北朝鮮防衛能力の強化を図ることが求められよう。だが他方において、日米韓3国は北朝鮮との真剣な対話の実現も追求すべきである。それは「悪行」に対する「報奨」を意味するわけではない。われわれの安全を確保するための重要な手段の一つなのである。