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節目の日韓 戦略的に利用し合う関係に

木宮 正史(きみや・ただし) 東京大准教授(韓国現代政治)

2010年08月25日

 韓国併合100年の節目に、菅直人首相は日本の植民地支配が韓国民の意思に反したことを認める談話を発表した。植民地化の過程それ自体に強制があったという客観的事実を明確に認める文言があればもっとよかったが、それも含まれていると考えれば、十分に評価できる内容の談話であった。

 1965年の国交正常化の時に比べ、非対称的な日韓関係は体制の価値観を共有した均衡的な関係に変化した。また、それに伴って植民地支配に対する日本社会の認識にも変化が見られた。その意味で「日韓関係は変わらない」のではなく、ダイナミックに変化してきている。

 共有する対米同盟関係をどのように管理していくか、中国の大国化という新たな変化にどのように対応するか、北朝鮮問題にどのように対応するか、こうした共通課題に取り組む日韓協力の必要性はますます高まる。さらに、こうした日韓関係を支える市民社会の交流も飛躍的に増大している。

 しかし、気になることがある。一つは、日韓の相互イメージにアンバランスが見られる点だ。ここ数年、日本の対韓イメージは劇的に改善されたのに対して、韓国の対日イメージはそれほど改善されていない。しかも、若者の対日イメージがそれほど好転していない。時間の経過が韓国の反日感情を解消するという楽観論は、少なくとも現状では裏切られた形だ。

 日韓の力の均衡化に伴い、日本は追い越すべき競争相手だという認識が現実味を帯びていることが、この背景にある。さらに、以前は、関心は高いが好きではないという対日観が多かったが、現在は、関心自体が高くないようにも思われる。グローバル化の中、積極的に海外に飛び出す韓国の若者にとって、日本社会は魅力あるものとは映っていないのかもしれない。

 もう一つは、日本社会における韓国に対する関心の偏りだ。一方で、韓国文化への関心のすそ野が広がったことは確かだ。主としてペ・ヨンジュン氏ファンに代表される中年女性に限定されていた「韓流」ブームが、東方神起などK―POPへの関心の高まりとともに若者にまで浸透している。

 他方で、私の所属する東京大学の学生の間で韓国語への学習意欲がそれほど高まっていない。中国語学習者が激増したのとは対照的である。韓国への高い関心は文化領域にとどまり、それが政治領域における日韓関係の重要性の認識には直結していないように思われる。

 文化交流の増大によって支えられた両国関係を、戦略的に利用し合う関係にまで高める政治的意思が必要だ。そのためにも、日韓間に横たわる歴史認識の問題に戦略的に取り組もうとした首相談話を評価したい。これが、言葉だけでない、内実を伴った未来志向の関係を切り開く第一歩となると信じたい。