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大震災からの復興 日本人の奥行きに期待

崔相龍(チェ・サン・ヨン) 韓国元駐日大使(法政大特任教授)

2011年4月21日

 3月11日、何の罪もないたくさんの日本人が犠牲になっていく光景をソウルの自宅のテレビで見ていた。知らぬ間に涙があふれた。隣にいた13歳の孫娘も泣いていた。孫娘のその感性は普遍的なものだ。私は2週間、黒いネクタイをつけ続けた。感性の共有・共鳴は大切なことである。

 最中に教科書問題が起きたが、韓国では、この点での日本批判と救援とは別だという理性的な意見が強かった。日本はもはや「よその国」ではない。韓日はそれだけ成熟している。

 東京都知事の「天罰」発言は韓国でも大きく取り上げられた。また、韓国内で強い影響力のある長老牧師が「無神論、物質主義などへの神様の警告」と述べると、信者や市民から批判が殺到した。こういう粗っぽい「極端主義」は何の役にも立たない。

 確かに自然の力を前に人間はいかにも小さかった。どうするか。自然と人間の調和を追求する、均衡がとれ、かつ鍛えられた「相対主義」が必要だ。

 地震、津波、そして原発事故と、日本は経験したことのない未曽有の事態にある。原爆の惨禍を受けた唯一の国だが、今度は原発からの被曝という不幸を強いられた。これはまさしく世界の科学への挑戦でもある。

 だからこそ、世界に向けて、これが人類にとってどういうものなのかを明確に発信してほしい。世界に対する日本の大きな役割だと思う。

 被害に耐えている平均的な日本国民の行動、姿勢に、世界は感銘を受けている。その秩序と落ち着きは、大いに称賛されるべきものだ。

 しかし同時に、日本を長く見てきた私からすると、このような極めて深刻な事態であるにもかかわらず、判断主体と責任の所在がよくわからない。政府や企業、そして専門家、知識人のリーダーシップが見えてこない。

 今はもちろん、復旧・復興に精いっぱいである。原発の危機がこれ以上深まらないよう祈らずにはいられない。そのうえで私は、日本が見事に復興を果たすことを信じて疑わない。日本の潜在力を知っていればこそだ。

 国民が国力を発揮しようとする時、危機を乗り越えようとする時、いい意味でのナショナリズムは必要だ。だがそれは過剰であってはならない。平和や人権、民主主義、福祉といった普遍的で文明的なメッセージのないナショナリズムは尊敬されまい。

 日本の復興は人類の英知の進歩であるという姿を、友人である日本人の幅と奥行きを、私は見たい。