現在位置:
朝日新聞社インフォメーション >
AAN >
AAN発
朝日新聞アジアネットワーク

AAN発 朝日アジアフェローのコラムやシンポジウムの詳報バックナンバー>>

大震災と国際支援 地域協力の制度化急げ

天児 慧(あまこ・さとし) 早稲田大大学院教授(現代中国論)

2011年5月21日

 ここ10年余り、アジアでは大自然災害が多発している。1995年の阪神・淡路大震災、99年の台湾大地震、2004年のスマトラ沖地震・大津波、08年の四川大地震とミャンマー・サイクロン大被害、そして今回の東日本大震災である。火山噴火など他の自然災害も後を絶たない。

 今まで国際的には支援する側にいた日本が、今回は逆に支援を受ける側になった。外国首脳らによる被災地への激励訪問をはじめ、世界規模で積極的な支援が行われているが、日本側の受け入れ態勢が整わず、何となく戸惑いも感じられた。

 米国の支援「トモダチ作戦」は「頼りはやはり米国だ」との強烈な印象を日本国民に与えたが、同時に忘れてならないのは、世界、なかでもアジアからの支援の輪の大きな広がりである。民間ボランティアを含めれば、中国、韓国、台湾などからの復興支援活動はもっとも熱心だと言ってよい。

 私は常々、エイズウイルス(HIV)や鳥インフルエンザなどの感染症対策、環境、大自然災害、エネルギー資源といった非伝統的安全保障(NTS)分野において、アジアの地域協力を包括的、戦略的に進めるべきだと主張してきた。

 なぜ、そのように考えるのか。第一は、これらは主にグローバル化がもたらしたものであるが、多くの場合、地域的な問題として発生し、被害を広げていく。今回の大震災も、東アジア各国・地域の経済に少なからず打撃を与えており、地域の深い結びつきを浮き彫りにした。第二に、NTS分野の地域協力は、アジアのなかの根強い相互不信感や対立感情を和らげ、相互協力を推進し、信頼醸成を高めることになる。第三に、この分野では日本の知的・技術的経験が生かされ、今後の日本外交の柱にもなり得る。そして第四には、そのことはアジアの伝統的安全保障面での制度構築、さらには地域統合を促すことにもなると考えられる。

 もしも、このようなNTS分野でアジアの協力・支援の機構が形成されていたなら、今回の震災でも、もっと迅速に効果的に支援を受けられ、地域全体の打撃も緩和することができたであろう。バラバラにではなく、政府、専門機関、NGOなど民間組織による三位一体の地域的連携による相互支援・協力の制度的な確立が急がれる。

 折しも、日本と中国、韓国の首脳会談が開催される。ぜひとも、アジア非伝統的安全保障協力機構の構築を積極的に提唱し、推進してほしい。