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震災後の世界 新たに連帯し再建の力に

竹中 千春(たけなか・ちはる) 立教大教授(現代インド政治)

2011年6月23日

 大震災から100日が経った。21日現在、死者1万5471人、行方不明者7472人。避難者12万人超。数字の向こうに、身近な人々の死を悼みつつ、格闘する人々の姿が見える。

 「世界一安全な国」としての日本は失われた。この国の科学技術も企業も政府も「落ちた偶像」と化した。今、何を語るべきか。今月開かれた第15回朝日アジアフェロー・フォーラムでは、被災地・日本・アジア・世界の中での「震災後」を真剣に議論した。

 その論点の第一は、世界各国の温かい支援である。アメリカは「トモダチ作戦」を宣言した。中国や韓国を筆頭に、アジア諸国も続々と救援に到来した。他国を助けることの多かった日本が助けられる側に回り、震災外交を担当した北野充氏(外務省)は「情けは人のためならず」と感慨する。

 第二に、国境を越えた市民の助け合いである。劉傑・早大教授は、中国では経済大国の自信を背景に「人間愛」に基づく支援が称揚された、と分析した。上海の日本研究者・呉寄南氏は市民の熱い募金活動に感動し、韓国の崔相龍・元駐日大使は普遍的な感性の共有を語る。尖閣諸島をめぐる日中の対立や朝鮮半島の緊張が、嘘のようだ。国家間の権力政治が、市民の助け合いに席を譲ったかに見えた。

 だが、冷静さも大事だ。「すでに震災前に中国は友好姿勢に転じていた」と国分良成・慶大教授は指摘し、「日本はV字形復興ができるのか」と、藤原帰一・東大教授は懸念する。その一方で、冷徹なリアリズムやペシミズムを超えるべき時だと、明石康・元国連事務次長は主張する。市民社会や国際平和を構想したルソーやカントも、危機の中から登場した、と。

 突然の暴力は、人の心を切り裂き、トラウマという苦しみの塊を生む。それを癒やすには、トラウマを言葉で解き明かし、分裂した自分を縫合する必要がある。大震災は日本を「震災前」と「震災後」に切り裂いた。人々の痛みを癒やし、社会の裂け目をつなぐには、力強い連帯の言葉が必要だ。

 海外の友人から多くの励ましを受けた。近年のアジアでは、スマトラ沖大地震・津波、四川大地震と、国際的な支援を受け、人々は災害を克服してきた。復興への知恵やネットワークも集積されている。そもそも国際社会の原点は、戦争の惨禍を乗り越えるための助け合いだった。震災を機に私たちの国は、アジアや世界との結びつきを刷新し、再建への力を獲得できるか。魅力的なヴィジョンが求められている。