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震災と東アジア 「日中韓同舟」の好循環を

藻谷 浩介(もたに・こうすけ) 日本政策投資銀行参事役

2011年7月21日

 自分は相手の目にどう映っているのか、折々に自問することは大事だ。複雑化するこの社会では、個人も地域も企業も国も、他人や他地域や他社や他国の立場から、等身大の自分を見つめ直す術(すべ)を身につけていなくてはならない。孫子の兵法でいえば「敵を知り己を知りて百戦危うからず」。相手の目線から見ることで、己の実体がわかり、交渉も競争も安心となる。

 とはいえ、等身大の自分を測るのは難しい。今般の震災をテーマに北京で今月あった朝日新聞アジアネットワークと中国現代国際関係研究院、韓国・東亜日報21世紀平和研究所のシンポジウムでもずっとそのことを考えていた。

 「『日本壊滅』といった海外での報道の与える印象と異なり、津波以外での死者は、私の推計では約100人と、阪神大震災の6千人以上に比べ劇的に少なかった。津波の教訓を生かせば、日本は世界で最も地震に強い国として再生するだろう。落とし穴はむしろ人口の津波、すなわち団塊世代の加齢に伴う現役世代人口の減少と高齢者の激増にある。地震の津波には、中韓の前に日本列島が立つ位置にあるが、人口の津波は、韓国を15年遅れ、中国を20年遅れで、同じように襲う」

 当方のそういう報告に対し、中韓の識者は、日本旅行と日本食を愛する個人としては安堵(あんど)し、自国の競争力強化を願う者としては複雑な思いを抱き、同じ東アジア人としてはやや寂しく感じたようだ。嫌な面もあるが尊敬もする、目障りだが好きでもある、個人としてはいい奴(やつ)らだが集団にすると厄介だ、という日本への複雑な思いをすくい取るように感じた経験だった。

 日本人から見れば、目先の自己利益に走る中国は、大国らしい鷹揚(おうよう)さに欠ける。だが相手は「まだまだ貧乏な俺たちに、金持ちがいちいち目くじら立てるなよ」と思っている。韓国は韓国で、自己中心的な2大国に翻弄(ほんろう)される立場を嘆きつつも、渾身(こんしん)の背伸びで対抗する。このせめぎ合いが好循環になって、3国の経済は国際的な地位を高めてきた。だが、足の引っ張り合いが過ぎて逆回転が始まれば、今度はそろって沈没する危険もある。

 領土問題をはじめ多くの利害対立を抱えながら、震災後の福島にそろって足を運んだ中韓のトップは、呉越同舟ならぬこの「日中韓同舟」を理解していた。同じ人間としての被災者への連帯が、隣同士の暑苦しいせめぎ合いの中を吹きぬける涼風となったことを認識し、尊い犠牲をアジアの今後に生かす道を探っていきたい。