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エネルギーと日本 対ロシア戦略を新段階へ

伊藤 庄一(いとう・しょういち) 日本エネルギー経済研究所・主任研究員

2011年11月19日

 近年、北東アジアのエネルギー市場で、ロシアの存在感が高まっている。2009年春にサハリン2から液化天然ガス(LNG)の出荷が開始され、同年末には太平洋岸から東シベリア産原油の輸出も始まった。昨年、ロシアは日本の原油輸入の7%、天然ガス輸入の9%を占めた。ロシアからの輸入で原油や天然ガスの供給元の多様化を進めるという日本の長年の目的はひとまず達成された。今後はロシアの資源の潜在力を、北東アジアの多国間協力を導く要素にすべきだろう。

 この地域は、将来の国際エネルギー市場の安定にとって重要な意味をもっている。世界最大のエネルギー消費国である中国と、未開発の油田・ガス田を有するロシアが位置するからだ。仮にロシアから中国への大幅な原油・天然ガスの輸出増を促す供給網を構築できるならば、国際エネルギー市場の需給バランスや価格の安定に好影響を与えよう。ただしその実現には、中国と隣接する東シベリアの油田・ガス田の本格的な開発が前提となる。

 国際エネルギー機関(IEA)は先日、「世界エネルギー展望2011」を発表した。ロシアの原油・天然ガスの生産能力の維持・向上が世界のエネルギー市場にとり重要だと指摘した。だが、ロシアは次第に生産コストの高い地域で開発を進めることが必要となり、巨額の投資が欠かせなくなることも明らかにしている。東シベリアはそのような地域の一つである。

 東シベリア開発を図るうえで、エネルギー消費国側の日本、中国および韓国は足並みをそろえてロシアとの交渉に臨み、開発に伴う膨大な投資やリスクを分散する可能性を探るべきだろう。天然ガスの供給網に関しては、現在、日中韓はロシアと個別に構想を協議しているだけだが、北東アジアで最も合理的な供給網の全体像の青写真を急いで描くことも重要だ。

 日本が北東アジアのエネルギー安全保障を考える際には、米国との政策調整も必須だ。1970年代から日本が参画してきたサハリン1の開発オペレーターは、エクソンモービルである。さらに現在、ロシアが急ぐ北極海からベーリング海を抜けてアジア太平洋に至るLNG輸送網の開拓が、ロシア北方艦隊の航路整備と軌を一にしていることも、日米がロシアと信頼醸成措置を築く必要性を示している。

 国際社会で「顔が見えない日本」と言われて久しい。エネルギーの地域戦略を通じて、日本がイニシアチブを発揮すべき時ではなかろうか。