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欧米危機とアジア 成長モデルの転換が必要

河合 正弘(かわい・まさひろ)=アジア開発銀行研究所長

2012年1月6日

 欧州の債務・金融危機と米国経済の回復の足取りの重さが、世界の成長センターである新興アジア経済の足を引っ張る懸念がもたれている。

 新興アジア諸国は、底堅い経済成長を示しながら、緩やかな減速の局面に入りつつある。当面の課題は、欧米経済の大幅な落ち込みのリスクに備えることだ。影響がすでに貿易、金融の両面で表れているからだ。

 ただ、新興アジア経済は1997〜98年のアジア通貨危機のような深刻な事態に陥る恐れはほとんどない。金融と経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が当時より格段に改善しているからだ。しかし、欧米経済の情勢次第ではリーマン・ショック直後に韓国などで見られた、急激な資本流出によるミニ通貨危機に陥る可能性はある。

 そこで国際流動性不足に備えて中央銀行間の通貨スワップ(交換)の強化、国際金融機関との予防的な支援取り決め、チェンマイ・イニシアチブを利用しやすくすることなどが必要だ。アジア域内の経済監視も強めるべきだ。

 問題は、欧米経済がさらに悪化した際に欧米の中央銀行が追加的な金融緩和策をとると、アジアに再び大量の資本が流入するリスクもあるということだ。資本流入によりインフレや資産バブルなど経済過熱が再燃しかねない。今後の資本流入に対し、アジア各国で為替レートを共同で柔軟に切り上げていく態勢を整えることが望ましい。

 新興アジア諸国が安定的な成長を続けていくためには、需要面でバランスがとれ、社会包摂的かつ環境調和型の成長を達成するための構造改革を進めることがますます重要だ。

 中国で課題になっているように、不動産投資と欧米市場向けの純輸出に過度に依存した成長パターンから脱却して消費主導型をめざすこと、教育・保健・医療など社会部門を重視して個人の機会均等化と社会的公平性を高めること、成長と環境保全を両立させること――つまり経済成長モデルのパラダイム転換が求められている。

 日本にとって、新興アジアとの経済連携なしに、明るい未来は開けない。日本としては、民間金融機関が欧州系銀行の融資引き揚げに対する受け皿となってアジア業務を拡大すること、企業も円高を利用してアジアへの直接投資を拡大させること、家計がインフラ・環境など対アジア投資を行える枠組みを整えること、さらには政府・中央銀行間レベルでアジアの金融安定化に協力することなど、多様な対応を行うことを検討すべきだ。