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変わる東アジア 選挙制度 決定的に重要

国分 良成(こくぶん・りょうせい)=慶応義塾大学教授(東アジア国際関係論)

2012年1月28日

 今年は世界各地で指導者交代の可能性がある。3月ロシア、4・5月フランス、10月ごろ中国、11月アメリカ、12月韓国と続く。

 昨年暮れ、もう一つ予想外のニュースが飛び込んできた。北朝鮮の金正日総書記死去と三男金正恩氏の最高指導者就任がそれである。独裁者の終身制と世襲による後継決定、東アジアには未だに前近代世界が存在している。北朝鮮では、党が国家や軍に対して優位性をもつ中国型政治体制への移行傾向が見られるが、軍の反発も依然として強そうだ。権力移譲が軌道に乗るにはまだ少し時間がかかるだろう。

 新年早々、会議で韓国を訪れた。その際どこでも同じ質問を向けられた。日本ではまずありえない質問だ。「韓国は今後米国と中国のどちらを選ぶべきか」。支持率低下が激しい李明博政権はその親米路線も攻撃されているからだ。だが一方で、国民の6割近くが中国に親しみを感じない現実もある。12月の大統領選挙の結果いかんでは韓国の内外政策も大きく変わる。

 今月の台湾の総統選挙では国民党・馬英九総統が再選を果たした。対中接近を戒める民進党の蔡英文候補は敗れたが、52%対46%の現実からして馬政権のこれ以上の対中傾斜は難しい。国民党は米国とのパイプが太く、対中政策で今後とも米国の意向に配慮するだろう。同時に行われた立法院(議会)選挙で選ばれた113人のうち、女性38人、博士27人、修士55人、しかも若い人材が多い。私も選挙の視察に訪台したが、政治に対する人々の熱情と二大政党制の確立に羨ましさを感じた。

 中国では秋の党大会人事を睨んで社会主義守旧派による胡錦濤派攻撃が激しい。対台湾政策でも軟弱と批判されていたが、台湾の選挙結果に胡派はひとまず安堵した。だが台湾の対中融和は、中国の一層の海洋進出をもたらす可能性が高い。秋の党大会はどうなるのか。中国に終身制はないが、依然として指導陣は国民不在の密室の中で決まる。その暗闘が今なお続き、社会との乖離は広がる一方だ。胡派は普遍的価値を重視してきたが、社会経済問題が噴出する中で守旧派は中国型モデルを声高に叫ぶ。国内矛盾のはけ口を外部世界に転嫁する危険もある。

 いずこも政治の季節を迎えているが、やはり国民の信を問う選挙制度の有無が決定的に重要である。選挙で決まればあきらめもつく。ただし、選挙ばかりに心が奪われて、政治家が国家や国民全体の利益を疎かにしてしまう日本の現実も問題だ。