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TPPとアジア 日本、自由化推進の中心に

山澤 逸平(やまざわ・いっぺい)=一橋大学名誉教授、元アジア経済研究所長

2012年2月25日

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加への事前協議が始まっている。米国などが厳しい要求をしていると伝えられ、日本国内の反対が激しい。米国主導の農業自由化を押し付けられることに必死で抵抗する。黒船襲来に対する鎖国攘夷論を思わせる。60年以上前の敗戦からの経済再生時、日本は貿易開放政策を選び、高度成長を実現した。グローバル化が進む世界で開放・改革以外に生き延びる道はない。

 ここで強調したいのは、単にTPPに入れてもらうのではなく、日本自体の構想を発信し、アジア太平洋地域の自由化推進の主導力となれ、ということである。もともとこの地域では、アジア太平洋経済協力会議(APEC)が貿易や投資の自由化を推進し、日本はその中心となってきた。アジアの奇跡的成長や、それに続く中国、ベトナムの高度成長は開放・改革戦略で実現し、日本はそれを支えてきた。今日、アジア太平洋地域は世界の成長軸になっているが、日本はこれに積極的に参加し続ける以外にない。TPPは、APECの一部メンバーが自由化を一段と牽引するものだし、日本は本来そのメンバーなのである。

 アジア諸国は、米国や豪州ほどには貿易自由化の準備ができていない。しかし、東南アジア諸国連合(ASEAN)はすでに域内の関税撤廃を始め、2015年までにサービス、投資、円滑化措置まで広げた経済共同体を実現する予定だ。そして日本、中国、韓国、豪州、ニュージーランド、インドとそれぞれ自由貿易協定を結ぶとともに、TPP交渉に刺激され、これら6カ国に呼びかけて、アジア中心の大自由貿易圏の結成を図っている。ASEANメンバーの中でもシンガポール、マレーシア、ブルネイ、ベトナムはTPP交渉にも参加している。日中韓3カ国も自由貿易協定の締結を話し合ってきたが、今は中国が最も熱心だ。韓国は米国、欧州連合(EU)と自由貿易協定を締結済みである。

 野田佳彦首相は昨年のホノルルAPECで、日本はアジア太平洋の自由化へ主導的役割を果たしたいと言明した。中国が入らないTPPと、米国が入らないアジア中心の自由貿易圏をどのようにつなげてゆくか。国内外に日本の戦略を明言すべきではないか。中国、米国の双方が参加しているAPECをつなぎ役として活用すべきであり、それには一昨年に横浜APECを主催した成果が役立つ。それでこそ経済力に見合った責任が果たせるのではないか。