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北朝鮮の挑発 試される国際社会の協力

平岩 俊司(ひらいわ・しゅんじ)=関西学院大学教授(現代朝鮮論)

2012年4月28日

 北朝鮮の朝鮮労働党代表者会と最高人民会議があり、金正恩氏が党第1書記、共和国国防第1委員長となった。すでに就任している朝鮮人民軍最高司令官とあわせ、党、国家、軍のすべての首位となり、権力継承が完了した。

 注目されたのは、金正日氏を「永遠の総書記」「永遠の国防委員長」としたことである。金正恩氏が事実上の筆頭ではあるが、若い指導者を集団で補佐する「集団指導体制」「集団補佐体制」とみるのが自然だろうし、父親の権威を最大限利用しようとしているのであろう。その意味で今回の措置は「遺訓政治」の制度化だ。

 金日成生誕100年を祝う閲兵式で金正恩氏は先軍政治の継承を宣言したが、その直前に強行して失敗したミサイル発射実験はまさに「遺訓」であった。この実験は金正日氏の存命中に決定されており、2月末に発表された米朝合意に至る交渉過程で、米国にもその意向が伝えられていたという。

 合意では、米国が栄養補助食品を提供し、北朝鮮はウラン濃縮、核実験、ミサイル発射を凍結するとされたが、北朝鮮は発射実験が合意に抵触しないとの立場だ。北朝鮮は米国の真意を試したかったに違いない。平和協定に至る覚悟があるなら「人工衛星」との主張を受け入れられるはずであり、そうでなければ、依然として米国は脅威であり抑止力の強化が必要となる、と。

 国連安保理は議長声明で北朝鮮に厳しく迫り、米国も米朝合意違反だとした。北朝鮮は反発して合意破棄の姿勢を見せ、韓国にも強硬姿勢をとっており、核実験、ミサイル発射実験、あるいは別の方法によるさらなる挑発行為への警戒が強まっている。

 北朝鮮が挑発を繰り返し、危機が頂点に達したとき、米朝二者協議が始まるという、従来の構図では次の行動を止められない。厳しく臨むと同時に、次の挑発の前に北朝鮮を協議の枠組みに戻さなければならない。それは北朝鮮の行為を許容することを意味するのではない。次の行動の口実を与えず、国際社会の意向を正確に知らせて姿勢の変化を迫るためのものだ。

 慎重に協議を進め、国際社会の設定する条件をクリアした場合には、北朝鮮と関係を改善する覚悟も必要だ。そのために国際社会は北朝鮮問題のゴールと、そこに至るプロセスについての認識を共有し、盤石な協力体制を維持しなければならない。決して容易なことではないが、それができなければ今後も同じような構図が続くことになるのだ。国際社会は試されている。