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自然エネ買い取り 目標高く市場の競争促せ

堀井 伸浩(ほりい・のぶひろ)=九州大学准教授(中国産業経済論)

2012年6月30日

 7月1日より、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の運用が始まる。太陽光、風力、水力、地熱などで発電した電力を電気事業者に一定の期間、決まった価格ですべて買い取ることを義務づけ、その費用を電気利用者が負担するというものである。初年度の買い取り価格は1キロワット時あたり太陽光で42円、風力で23・1円、期間はいずれも20年となった。

 この価格はFITで先行するドイツと比べて高く、バブルを生むとの懸念がある。ドイツでもかつて日本と同水準の価格で導入量が急拡大し、負担に耐えかねて、現在は太陽光で26円、風力で9円程度と、大幅に引き下げている。割高な価格は今後20年もの長期にわたって電気料金の重しになる。

 そもそもFITでなければならないのか。FITによらず再生可能エネルギーの導入量が爆発的に拡大した実例が存在する。中国の風力発電だ。中国は2010年に米国を抜いて風力発電設備導入量は世界最大となっている。

 導入が拡大したのは、発電事業者に一定比率で再生可能エネルギー電源の導入を義務づけ、国家事業として大規模な風力発電所建設を進めた措置によるものであった。設備導入に当たって競争入札制がとられ、価格と品質のバランスで落札メーカーが選定された。

 その結果、当初3割にとどまっていた国内メーカーのシェアが8割を超えた。政府が野心的な高い目標を打ち出すことで巨大市場を立ち上げ、価格競争力とアフターサービスを武器に、国内メーカーが技術的に先行していた海外メーカーを追い抜く成果を生んだ。中国の風力発電の卸売価格は6円程度とドイツと比べても3割低く、これが中国の風力躍進の原動力だった。

 FITと異なって導入量を固定し、価格は競争により決定するこの方式の利点は企業にコスト削減を促すところにある。日本では期待通りに進まなかった再生可能エネルギー利用割り当て基準(RPS)に近い。日本では政府の導入目標自体が低く、国家事業で市場の立ち上げを牽引する支援策も講じられなかった。中国の成功から改めてFIT以外の制度と運用の改善を検討する価値があるのではないか。

 再生可能エネルギー導入においてもコスト低減を図り、節約分を国際競争力強化や復興支援に使うことを考えるべきだ。競争原理の働かないFITでは、コストの重さで持続的な導入に結局つながらない懸念があり、競争力を持った再生可能エネルギー分野の日本企業が生まれる希望も持てない。