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韓国大統領選 高齢化、日台とモデル示せ

浅羽 祐樹(あさばゆうき)= 山口県立大准教授(韓国政治)

2012年12月29日

 民主主義とは、「(反対者の)頭をたたき割る」かわりに「頭を数える」ことだ、という。とにかく数が物を言う。頭数が特定の層で増えると、その層が選挙で有利になるだけでなく、公共政策をゆがめる恐れもある。

 少子高齢化に伴う人口構成の変化は、19日の韓国大統領選でも威力を発揮した。セヌリ党の朴槿恵(パククネ)氏は、投票率が伸びれば不利との前評判を覆し、76%という高投票率のもと、民主統合党の文在寅(ムンジェイン)氏に100万票以上の差をつけて勝利した。どうしてこうなったのか。カギは、年齢層ごとの絶対数と相対的投票率にある。

 韓国の有権者の特徴は、年齢層ごとに支持する候補に顕著な差がある。テレビ局の出口調査では、30代以下の3分の2が文氏を支持したが、50代以上は7割が朴氏を支持した。10年前、若年層の支持を受けて盧武鉉(ノムヒョン)氏が当選した時と同様、世代間の亀裂は大きい。

 投票率も年齢層で差がある。今回、30代以下の投票率が平均に及ばない一方、50代は9割が投票した。そもそもこの10年間で、50代以上の有権者比率は10ポイント以上増えて全体の4割に達し、30代以下を初めて上回っている。

 簡単にシミュレーションすると、各年齢層の有権者比率が10年前と同じであれば、結果は逆転し文氏が勝利する。すべての年齢層で投票率が同じ場合も、やはり文氏の勝利となる。「老風」が吹いたとされるゆえんだ。

 朴新大統領の任期中、韓国は65歳以上が人口の14%以上となる高齢社会に突入する。2014年6月に統一地方選を控え、「福祉」の中でも高齢層にとって切実な医療や年金が重視され、若年層が望む育児や教育が後回しになるのは、半ば当然だ。経済成長が頭打ちになるなか、パイの奪い合いはますます激しくなるだろう。

 とはいえ、高齢層に対する福祉も十分とはいえない。制度の整備が遅れ、年金を満額支給されている人は一人もいない。医療保険の適用範囲も狭く、貧困率もアジア随一の高さだ。

 立候補を取りやめた安哲秀(アンチョルス)氏は言った。「先進国で最も高い自殺率は現在を表す指標。1・24にとどまったままの出生率は未来を示す指標。今、不幸で、未来が不安なのが韓国だ」

 世代の亀裂を緩和し将来世代へとつなぐことが、今の韓国の課題だ。「老いるアジア」の民主体制として、持続可能な先進モデルを日本や台湾とともに示せるか。それこそが「国際社会に共に貢献する日韓関係」「未来志向の日韓新時代」にかなう姿ではないか。