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葛藤を超えて

ベイ・グギン/アジアネットワーク客員研究員
(韓国・東亜日報記者・21世紀平和研究所研究員)

 日本に来て5カ月。この間、私が感じた韓日関係について何回か記事を書き、読者から熱い反響をいただいた。がっかりした場合もあるが、それほど日本でも韓日関係について関心が高いことが解った。私自身いろいろ勉強をさせてもらったことがたくさんあった。特に私と同じ年代の方からのメールは興味深かった。

 韓国語を勉強していると言う一人は「ベイ記者が指摘する日韓間に横たわるイメージは、あまりにステレオタイプだ」と批判しながら「両国間にはより良い新しいイメージの流れが生まれ育っている」と指摘した。その通りだと思う。多少悲観的に書いた気がする私の記事に対してこんな反応があって嬉しかった。

 とは言え、交流が増えれば増えるほど誤解と問題も増えるのは避けがたい。恋愛から結婚まで成功した夫婦関係でも同じだろう。こんなことにどう対処すべきか。最近インタビューした鳥取県の片山義博知事の話はその面でいろいろ参考になった。

 鳥取県はいま、日本で一番韓国との交流を深めている地方の一つだが、その背景にはやはり片山知事の深い哲学があった。

 片山さんは「日韓の間では教科書とか靖国とか歴史を巡る一部の問題が『全面戦争』になってしまう傾向が問題」と前提し、問題があればまずはその問題に絞って解決する姿勢が望ましいと強調した。夫婦も時々けんかをするけれどもそれが離婚にまで行っては良くないと言う話だ。

 韓日間のパイプが多種多様に増えていることも両国の関係をより深めていると片山さんは言う。かつてお互いの交流と情報が貧しかった時には政府同士の葛藤がそのまま両国民の葛藤につながりかねなかった。でも今は政府間にどんな葛藤があるにしても民間レベルの信頼は簡単には傷つかない。

 私もその通りだと思う。ただし一部の問題があるとしたらそれを避けるよりは顔をつきあわせて話すことが必要だ。夫婦の葛藤は時間が解決するとも言うが、やはり対話が大切ではないか。

 片山知事は、いずれ日本海が地中海のようになり、裏日本がアジアの中心地の一つになって日本の未来を担う日が来ると信じている。その可能性はアジアとの経済共同体の形で育ちつつある。境港と釜山との航路を走る船はいま週3回。いつも満杯。週一回空船が走った8年前には想像もつかなかったことだ。

 必ずや日韓関係もこの船のようにもっと豊かで、頻繁になるだろう。それをより確かにするためには、ドラマとかグルメとか旅行を通じた交流だけでなく、互いに怖がらないでもっと相手の心の中に入ってみることが大切だろう。

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 ベイ・グギン AAN客員研究員(韓国)。韓国・東亜日報の経済記者、21世紀平和研究所の研究員兼務。現在、朝日新聞アジアネットワークで研修中。日本経済の取材研究を通して日本とアジアの将来像を探る予定。