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文明・市民の条件(3) 環境を守る努力と知恵

金 星光(ジン・シンガン)/延辺日報記者、前AAN客員研究員(中国)

2004年6月23日

 「地球村」で最も問題視されている1つが環境汚染である。単にある団体や国家の次元の力だけでは解決できることではない。根本的には環境を利用している一人一人がどれだけ環境の重要性を認識しているか、そしてどのように環境保護を実践へと移していくかが鍵だ。この点、日本人はかなり意識が高く、洗練されている。

 日本環境省の報告によると、2000年日本全国の日常生活ゴミ排出量は5236万トン、これを処理するのにかかる経費2兆3708億円(日本円貨)、ドル換算するとなんと200億ドルにもなる。日本でも他の国のようにゴミ処理が無視できない課題となっているのである。それだけに国家的な対策は勿論、市民や各団体の措置も甘いものではない。

 東京日本橋富沢町の住民達が守っている規定が1つある。月曜日と木曜日には燃えるゴミと生ゴミを、火曜日は資源ゴミ(新聞紙、カン、ガラス瓶等)と粗大ゴミ(家庭廃棄物のなかの冷蔵庫、洗濯機、テレビ等の家庭製品や家具類等)。金曜日には燃えないゴミとプラスティック類(合成樹脂の一種)というように、曜日ごとにゴミを分別して捨てているのだ。住民達は必ず午後9時前には指定された場所にゴミを捨てる。粗大ゴミを捨てる場合には役所の担当部署に電話をかけ、前もって通知しなければならない。そうするとトラックで取りに来てくれるので市民は定められている料金を支払うのだ。

 ゴミ回収は東京だけではなく日本全国で実施されている。住宅街だけではなく、東京の地下鉄の駅や会社、どこでも燃えるゴミと燃えないゴミ、そして資源物を回収する箱が備え付けられている。道端の飲料自動販売機の横にもゴミ回収箱が置かれており、ゴミを分けて捨てるのが習慣となっている。日本の環境汚染を防止するのに行政と市民の協力が欠かせない。このような形で毎日継続されている。

 また、テレビでは「捨てた新聞紙や雑誌で樹脂をつくることができる」という公共広告やコマ−シャルを目にする。

 更に驚かされたのは、先日ある人から受け取った名刺。その素材はリサイクル紙だった。日本は資源ゴミのリサイクルにかなり神経を使っている。日本環境省の報告書によれば、1999年に排出された産業廃棄物約4億トンの40%が、また2000年には4億600万トンの45%がリサイクルされた。

 山形県長井市では、市街地の約5000世帯にから出る残飯をはじめ、生ゴミを堆肥化して農業に活用している。生ゴミを専用設備で肥料にし、地元の農家や自分達の畑を耕す住民達が農産物有機栽培に利用しているという。このようにして生産された肥料は1トン当たり4000円、この活動を地元の人達は「レインボ−プラン」と呼んでいる。地域内の循環による農作物栽培の確立と町作りを出発点として、台所と農業をつなぎ、都市と農村をつなぐ、現在と未来を往来する「希望の橋」であるからだ。

 「レインボ−プラン」の企画開発者である菅野芳秀さん(54)によると、1991年7月に発足した「台所と農業をつなぐ・ながい計画」調査議員会(愛称;レインボ−プラン)は1993年から1995年にかけて生ゴミ分別回収の試験的な事業をはじめ、1997年2月から生ゴミ分別収集を本格的に実施した。翌年7月に生ゴミでつくられた肥料で生産された初めての農産物であるカボチャ1.5トンが出荷された。生ゴミ分別を定着させることで日常生活から出る燃えるゴミは33%も減った。日本環境省の集計によれば、2001年まで日本全国には生ゴミを含め堆肥化を目的とした施設が45箇所あり、処理能力は1日当たり680トンに達する。

 愛知県田原市では、アブラナの種から油を搾り出した後の廃油や学校給食の食用廃油などを回収精製し、公用車などの燃料として再利用している。京都の八木町では排泄物や食料品加工工場から出た屑を大型タンクに入れ、発酵させ、ガスは発電に、発酵した廃棄物や食料品のかすは脱水、乾燥させ、肥料として畑に出荷している。

 今年4月29日、東京の神田川と日本橋の川を舟に乗って循環する《小さな船旅行》イベントがあった。水辺環境運動を25年推進してきた「神田川船協会」の49回目のイベントであった。毎年、春と秋に1回行われている活動で、現在まで延べ1万余名が参加した。参加者たちは水質をチェックしたり、水辺を清掃するなどの活動をしている。10回目からは毎年、東京千代田区の小学生たちを招待して環境教育をしている。また神戸市長田区の市立長楽小学校では毎日の給食の後、6年生の4人が調理室の前に出されている人参、じゃがいもの皮などをやや離れた生ゴミ処理機械に持って行く。そこで生ゴミはもみがらや腐植土などと混ぜ合わされ、肥料となり、学校の野菜畑に利用されている。長楽小学校でこの活動が始まったのは2年前。指導教諭の金山よし子さんは「生徒たちは動物を飼うような気持ちで楽しく肥料を作っている。」と紹介した。

 環境問題に詳しい大阪のNPO団体(非営利組織)が「ゴミと私達の生活」をテーマに小学校高学年を対象に、ある教材をつくった。12時間分に相当するこの本は指導案、材料集、カラ−ポスタ−が1セットとなっていて、ゴミの問題を習い始める小学校高学年の総合学習の補助資料を目指している。12時間の内訳は「ゴミと私達」,「どうすればゴミを減らせるか」,「私達が出来る事」。ダイオキシンなど有毒化学物資の問題をきっかけに家庭ゴミや産業廃棄物の実情の理解を深め、環境を保護できる買い物のし方を自ら考える力をつけさせることを目指している。