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許世楷vs王毅

張 瑞昌(チャン・ズイチャン)/中国時報記者、前AAN客員研究員(台湾)

2004年10月

 会場を埋めた記者たちを前に王毅駐日中国大使は自信をみなぎらせていた。「政冷経熱」と形容される日中関係の現状は靖国を参拝する日本指導者に全面的な責任があると指摘し、さらに、もし日本が国連安保理の常任理事国になりたいなら、近隣国の信頼を勝ち取れるような行動をとらなければならないと述べた。

 中国外交界期待の星の一人といわれる王大使が今月初め東京で開いた記者会見の一コマだ。大使は現在51歳、故・廖承志氏に並ぶ日本通として脚光を浴びている。彼は北朝鮮問題の6者協議での言動で名をはせ、中国のメディアでは、原則を堅持しながらも柔軟姿勢で交渉に当たれる新世代の外交官と評判だ。日本側も、王大使が日中両国間の架け橋になりうる人物で相互理解と人的交流を発展させることができると考えている。

 中日友好協会の会長であった故・廖氏は、日本各界との人間関係ネットワークを生かして日中関係の雪解けに貢献、日中関係正常化の鍵となった人物だった。21年前に氏が死去して以来の後継者が王氏である。北京は王大使に大きな期待を寄せるだけでなく、その駐日大使就任は中国が日本との友好関係の発展をいかに重視しているかを示していると説明している。

 一方、台湾の駐日代表、許世楷氏は、そのバックグラウンドが王大使と全く違う外交官である。かつて海外在住の反政府分子としてブラックリストに載り、30余年間日本で過ごした東大法学部博士だ。いまでは70歳近く、仕事ぶりは積極的でエネルギッシュである。やはり10月上旬東京で開かれた国慶節祝賀会では日本の政界、産業界の有力者多数が集まり、彼の人脈の広さを見せつけた。台湾独立派出身の許代表は伝統的な外交官タイプではない。知日派が欠乏する民進党政権が彼にかける期待の大きさがわかろうというものだ。年齢に負けずチャレンジし続けるという趣がある(「六出祁山、老驥伏櫪」)。

 王大使も許代表も、台湾総統選挙が終わった後に相次いで赴任した。(米国の)世界戦略改変が新たな段階を迎えたことを受けて台湾海峡の両岸とも対日政策を重視していることを示している。王大使は国際政治の舞台で活躍する中国の新世代外交官と評判である一方、許世楷代表は戦後台湾で影響力の大きい知日派である。(外交の)前線指揮官である二人の違いを強いてあげれば、年齢であろうか。許氏の巡り合わせは台湾の民主的発展の歴史的宿命である。

 許氏の影響力は大きいとはいえ、日本での外交活動は生易しくはない。王大使も同様の役割を果たすことを期待されているだろう。両国の外交的実力には開きがある。台湾は小さいとはいえ、大事をなし得ることを理解しなければならない。日本とのつきあいで台湾の人材に限りがある。今後長期的視点から忍耐強く日本と付き合っていかなければならない。花開くまで20年がかかろうが、価値ある時間の使い方である。