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新世代の国際的視野

張 瑞昌(チャン・ズイチャン)/中国時報記者、前AAN客員研究員(台湾)

2005年3月8日

 台湾と同様に日本でも政界の世代交代が趨勢となっている。ともに民主主義で地理的にも近い両国で、旧世代が牛耳ってきた政治に新世代が挑戦しているのだ。とはいえ、時代背景の違いから、新世代政治家の政治スタイルには違いも見えている。

 台湾の新聞局長林佳龍は、最近の訪日で十数人の国会議員などと会談したが、その中に将来の首相候補と目される安部晋三自民党幹事長代理、民主党「影の内閣」の防衛庁長官である前原誠司衆院議員、父親の死去で後を継いだが父親をしのぐ力をつけてきたといわれる山本一太参院議員、そして市政改革で注目を集める横浜市長中田宏氏がいた。

 彼らは日本の新世代政治家を代表する「明日の星」である。代々の政治家ファミリーの跡継ぎもいるが、その政治スタイルは先代たちと異なる。他方で受け継ぐ政治基盤とは無縁だったが、独力で政界に上った議員もいる。

 たとえば、安部晋三。祖父に岸信介元首相、父に安部晋太郎元外相をもつ三代目だが、自民党指導者の座後継に向けて着々と準備を進めている。他方、松下政経塾出身の前原誠司は野党民主党若手議員グループのリーダーとして自民党に挑戦する勢力を形成している。

 「国益を出発点としながらも民主的価値を重視し、国際的視野もある」のが日本の新世代政治家の特徴だ。彼らのほとんどは留学や米国の著名な研究機関勤務など海外経験がある。外務政務官もつとめた自民党の水野賢一代議士はかつて米国のゴア上院議員の事務所でアシスタントをした経験がある。若くビジネスライク。小選挙区での選挙を戦い、民意に押し出されて政治家となった。政治スタイルが過去と著しく違うのも当然だ。

 日本政治の新世代は欧米の政治経済情勢に造詣があり、欧米の戦略にもある程度通じている。彼らの思考パターンは、アジアを国際視野の中心に置いているわけではない。親中か親米かとか、左か右かといったカテゴリーでとらえることもできない。台湾の民主化を支持すると同時に、日中関係の発展も唱える。かつまた米国の強いコントロールからの離脱を試み、日米同盟の枠内で日本の独自色を打ち出すことの重要性を強調する。

 日本のこうした状況と比べて、台湾政治家の新世代の力量は相当見劣りがするのは明らかだ。たくさんの学生運動世代が若くして選挙に打って出て政界入りしたが、十分な外国語の訓練も受けていないし、国際政治にも疎く、国際人脈も培っていない。日台の議員交流一つみても、相互の深く厚い関係を作り得ていない。そしてもっとも重要な点は、日本のことをよく知っている台湾の若い政治家がわずかしかいないことだ。

 日台の相互政治関係の現状を知れば知るほど、台湾新世代の国際経験の不足がますます心配になる。日台関係の将来が有能な人材の不足によって困難に直面しはしないだろうか。この問題を短期間に解決するのは至難の業ではないかと恐れている。