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地域社会の生存戦略(1) 都会人の夢を叶える「田舎」

金 星光(ジン・シンガン)/延辺日報記者(現経済部長)、前AAN客員研究員(中国)

2004年8月26日

 経済の長い沈滞で、地方自治体が苦労を重ねるなか、日本は地方改革に急速に取り組んでいる。日本全域では財政行政改革大綱を制定し、全分野で本格的な改革を進めている。その代表的な事例が、地方分権の推進と市、町、郡(我国の市、郷、村と類似)の合併である。地域的環境に大きな変化が起きているし、地域ではその変化に能動的に対応しながら自立力を準備し、地域建設を着実的に推進している。本紙は金星光記者の企画シリーズを通じて、地方の特性を創意的に活かし、故郷を魅力的に建設するために積極的に挑戦している日本の若干の地域を紹介することで、延辺の郷・村建設の参考になるよう期待している。(2004年8月26日、編集者)

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 岡山プレースツアーに参加した外国人特派員20人が岡山県の中央・吉備高原にある加茂川町(合併後は現吉備中央町)に着いたのは2月20日午前11時(日本時間)であった。この地域は中国の行政区で言うなら郷に該当する。

 「加茂川町の主要産業は農業です。米、白菜、桃、生花、牛乳などを主要農産物として生産しています」

 私たちを案内した町の片山秀樹企画課長(現出納室長)が加茂川町について親切で真剣に紹介してくれた。町の現有耕作地面積は693ヘクタール、そのうち、水田が529ヘクタール、畑が140ヘクタール、残りは果樹園であった。総人口6100余人のうち、農家人口は3600余人で、農家数1050余世帯であった。

 私たちがまず訪れたのは「百姓王国」であった。1996年に当地の農家たちが山間の上田西地区に苦労して建てたもので、農民たちが自ら野菜、果実、花などをそれぞれ担当して各自役割を発揮している一方、都会の人も農作業体験のできる条件を作り、また当地で生産した新鮮な農産物を消費者に直販している。都会人が都心の喧噪を避けて観光と農作業体験ができる一種の複合的テーマ観光地である。

 「百姓王国」のイチゴ大臣―能勢仁司氏が私たちをイチゴ栽培ハウスへ案内してくれた。ずらっと並ぶハウスの中では、真っ赤に完熟したイチゴがたくさん実っていた。

 「どうぞご自由にお召し上がりください。甘くて、気分も爽快になります」

 能勢氏はイチゴを採る要領を教えながら語った。

 イチゴハウスで生産できるイチゴは年4トン。4世帯の農家が一緒に経営している。ハウスのイチゴは収穫しやすいように地面から60〜70センチメートル上で栽培し、イチゴを育てる土にはビニール薄膜が設置され、必要な水分と養分が提供されていた。ハウスに入ると、すぐに農作業体験が始まった。体験者はここで安全に気を配ったイチゴを直接に買うこともできる。

 私たちは次に町営の牧場「ストックファーム」に向かった。牧場の草地知之所長の案内でヨーロッパ式牧場と牛舎を見学し、直接に牛に餌をやったり、牛の乳を搾ってみたりすることもできた。そしてそこを去る時には、牧場の優しいおばさんからお土産として牧場で生産した田舎卵とチーズをいただいた。

 野菜園での収穫や果樹園での桃摘みなども得難い体験だった。さらに、農家での宿泊体験を通して、素朴な田舎の人々の親切を感じることができた。当地の「お婆さん」「お母さん」たちが手塩をかけた新鮮な野菜や素材で作った田舎風料理も満喫でき、下手ながら一緒に作ってみることもできた。町ではまた2001年5月に、「体験、交流、宿泊」の新しい拠点になる故郷の「ひだまり」(修学旅行など学校関係とか婦人会をはじめ各種団体が体験しに来る宿泊研修施設)まで建てているのである。

 加茂川町は、「体験は一種の手段であり、地域人々との交流体験を通して、余暇・地域文化・故郷らしさ・人間らしさなど人間の心を充実させるのが目的」と話している。しかも、ホスト側が提案する形の体験ではなくて、体験希望者の想像力・独創性を活かした体験者側提案型の企画を主にして、加茂川町に来て体験する個人や家族・団体が希望する体験メニューやスケジュールを事前に準備していた。また、農作業体験や食事、ホームステイ(当地の家庭に一定期間滞在しながら生活を体験する活動で、外国人の場合は言語習得と日本人家庭生活体験が主である)など、できるだけ「その日その時刻」の日常生活をそのまま体験できるように心を砕いている。

 加茂川町の産業振興、地域建設は、このように農業の生産販売活動と観光を密接に関連させ、消費者と直連した有機農業を推進するなど、農業経営全体を輝かせているのである。