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地域社会の生存戦略(2) 自然の魅力を活かして地域に活気

金 星光(ジン・シンガン)/延辺日報記者(現経済部長)、前AAN客員研究員(中国)

2004年9月6日

 岡山県の西北側に総面積が121.25平方kmもある大佐町がある(合併後は新見市の一部に)。私たちの地域で言うなら郷である。中国山地の北側に位置するここの景観は起伏がひどく、森林面積が89.4%を占めている。人口は約4000人、町全体はいつも緑の山と、涼しく吹き抜ける風、そして薬水のような水にあふれ、「生態自然博物館」と呼ばれるほど人気がある。

 私たちが大佐町を訪問したのは2月20日午後4時頃だった。私たちを乗せたバスはまっすぐ町のシンボルの大佐山(海抜988m)に向かって走った。山頂の駐車場で梅田和男町長(郷長と似た行政官)が迎えてくれた。

 「きれいな空気を吸いながら目の前の雪景を満喫して下さい」

 梅田和男町長からの挨拶であった。

 真っ白な絨緞で飾られたように、周りは神秘的景色に囲まれていた。思い切り山頂の清新な空気を吸って喉がすっきりした。

 「こんな所だったら演歌数曲ぐらい自信あるさ」

 私はこんな余裕を感じながら、大佐町が事前に準備してくれた雪靴、すなわち厚い雪上を歩く時に履く西洋式靴を履いて、みんなと一緒に傾斜度が35度もある大佐山頂の雪景を散歩した。今日に限って天気がよくて、遠く向こう側の鳥取県の海抜1700メートル余もある大船山をはじめ、多くの山群がはっきり見えた。山頂には芝生、旅亭そして休憩室もあった。山頂の崖から見下すと、大佐町が一目に入ってきた。

 「この自然景色は大佐町の誇りです。資金も物資もかけずに楽しめるのです」

 大佐山の魅力は雪景散歩だけではなかった。さらに人気があるのがパラグライダー。自然の恩恵を受けている大佐山には西日本一番の上昇気流があるため、パラグライダー愛好家たちが全国各地から集まってくるそうだ。

 下山後、私たちは町民たちと一緒にモチ米で餅を作り、大佐の豊かな四季を表現した学生たちの源流太鼓踊りを観覧したり、町民たちと一緒に食事をしながら、大佐町の自然の恩恵をより深く理解することができた。

 岡山県の高梁川の源流である大佐町の小坂部川両岸の奇岩怪石、樹木の密生している森林、花草の四季変化、名の知らぬいろんな山鳥たちの鳴き声、悠久の歴史がある旧跡と700年の年輪を誇る樹木も、訪問者を歓迎してくれた。また、町では修学旅行生を対象として、川辺の植物研究や水質調査などができる河川教室を運営していた。

 大佐町に訪れる観光客は年7万人で、町では観光客の宿泊など一連のサービス施設をきちんと整備していた。

 同行のドイツ人記者、ニコル・パスジアン(30歳)は「伝統と自然を活かした観光ビジネス。すてきじゃないか」と賛辞を惜しまなかった。

 町全体は地域の建設のために、行政財政の効率運営と広域行政推進を積極的に強化すると同時に、山を保護する林業など地域の特性を活かす事業に力を集中していた。

 特に豊かな田舎の自然を守っていく環境保護を何よりも第一位におく。郷土の子供を育てる教育に気を配り、故郷の美しさを保つためにゴミ処理体制の完璧をめざす。快適な生活を創出するための水道整備や、歴史・伝統・文化祭りを保存継承する事業などに力を尽くした。

 大佐町を離れながら思い出したことが一つあった。大佐町の町民憲章であった。 「私たちは中国山地の生命を活かす豊かな自然を愛し、活力の溢れる魅力的な大佐町を実現するために努力する。
 1.源流の自然を愛し、清潔な環境を保つ
 2.同情心を持ち、お互いに助けながら仲良く過ごす
 3.伝統を活かし、新しい文化の創出に努力する
 4.労働を楽しみながら健康な生活を行う
 5.国際感覚を持ち、平和的未来を念願する」