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言葉から見た比較文化論

『日本語と中国語』 劉徳有著 講談社・1785円
評者・高原明生(東京大教授)

2006年5月

 著者は、要人の通訳や新華社特派員を長く務めた、中国政府文化部元副部長にして日本語の達人。言葉が違えば文化は違う。日本語と中国語を比べることから二つの文化の違いを考え、相手を理解する難しさとともにその楽しさを巧みな語り口で教えてくれる。

 日本の「腐っても鯛(たい)」にあたるのは、中国では「痩死的駱駝比馬大(どんな痩〈や〉せたラクダも馬より図体〈ずうたい〉がでかい)」。なるほど、いかにも日中の風土の違いが感じられるではないか。

 とくに面白いのは、ダイナミックな社会の変貌(へんぼう)を反映した中国の新語事情だ。「電脳」は日本語化しているが、「袋鼠族」を知っている人は相当の中国通。「袋鼠」すなわちカンガルーのごとく、両親の庇護(ひご)の下から離れない若者のことだという。

 「〜族」という言い方は、「人気」などの言葉と同じく、最近日本から伝わった。

 文化交流に着目すると、世界でも特殊な、日中間の微妙なつながりとへだたりが見えてくる。

 そのほかにも、あいまいな日本語表現の中国語への訳し方や、中国で使われる和製漢語の驚くべき多さなど中国語を使う人に役立つ情報を満載。次の版からはぜひ索引をつけてほしい。