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詩を読んで旅に出よう

『漢詩紀行辞典』 竹内実編著、岩波書店・4935円
評者・加藤千洋(朝日新聞編集委員)

2006年7月

 歴史は遡(さかのぼ)ればどこまでも奥深く、空間を極めようとしても果てしがない。この中国のつかみようのない魅力は古来多くの詩人を旅に誘ってきた。

 広大無辺の世界をうたったあまたの詩の中から330編を厳選。これを読み解いて時空を超えた旅を試みようとしたユニークな辞典が本書だ。

 最古の夏王朝は長く幻といわれたが、近年の研究で実在が証明された。夏の初代皇帝は治水で名高い禹だが、この聖人の名にちなみ中国大陸は「禹域」とも呼ばれる。

 本書は、この「禹域」を江南、北京とその周辺、中原、長安と辺境、巴蜀(はしょく)、長江悠々、長江下流域、華南とその奥地の八つに分類。それに域外として扶桑(日本)と序章の「禹域」を加えて10章から成る。

 項目としてたてられた80カ所の地名には杭州や桂林、三峡といった名高い景勝地からチベットのラサや海南島といった辺境の地までが網羅される。詩人も杜甫や李白といった盛唐の詩聖から近現代の梁啓超、毛沢東と実に幅広い。

 読みたい詩、知りたい地名や人名がすぐ引ける目次と作品がついているのは便利。中国の旅には格好の伴(とも)となる一冊だ。