朝日賞

2011年度 朝日賞
 ◆悠久を精密に刻む 香取秀俊さん(47) 物理工学者

香取秀俊さん  100億年の時を刻んでも1秒も狂わない。そんな時計を開発した。

 「エジソンになりたかった」。壊れた家電を集めて、テレビゲームを作ったり、FM局を開設したり。回路図を眺めて1日過ごし、親から「勉強しなさい」とタンスの上に隠されたこともあった。

 開発した光格子時計は極限まで冷やして、光の入れ物「光格子」に閉じ込めた原子内を回る電子を「振り子」に使い、レーザー光ででその振動を読み出す。

 絶対零度まで下げるレーザー冷却法を1999年に開発した。光格子とは相性が悪いとされたレーザー冷却法だが、光の影響を打ち消す「魔法波長」を発見して問題を解決。レーザー冷却と光格子を同時に使えるようにした。

 負けず嫌い。人と同じことはしたくない。自信の技術が日本発だとアピールしたくて、フランスでの国際会議で「光格子時計」と漢字で題を書いて発表した。

 「精密計測は昔からのあこがれ」。秒を小数点以下18桁の精度で測れる光格子時計の実現も近い。秒を定義する新しい国際標準の有力候補にもなっている。

 高速で移動すると時間が遅れる相対論のウラシマ効果。歩いている人の時計は止まっている人より遅れる。新しい光格子時計は、この差もわかる夢の精度だ。

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 かとり・ひでとし 1964年、東京都生まれ。88年東京大学工学部物理工学科卒業。91年東大大学院工学系研究科博士課程中退。94年独マックスプランク研究所客員研究員。2010年から東京大教授。06年日本IBM科学賞、08年ラビ賞、10年市村学術賞特別賞。11年から理化学研究所主任研究員を兼務。


2011(平成23)年度
横尾 忠則詳細へ 常に時代と共振する斬新なグラフィックデザイン・絵画の制作
冨田 勲詳細へ 世界を舞台にした作曲家・音響クリエーターとしての活動
上野 千鶴子詳細へ 女性学・フェミニズムとケア問題の研究と実践
香取 秀俊詳細へ 光格子時計に関する研究
坂口 志文詳細へ 制御性T細胞の発見を通じた免疫寛容の解明
贈呈式詳細へ