朝日賞 - The Asahi Prize -

2011(平成23)年度 受賞者一覧

◆横尾忠則さん ◆冨田勲さん ◆上野千鶴子さん ◆香取秀俊さん ◆坂口志文さん
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◆時代映す「自画像」 横尾忠則さん(75) 美術家

横尾忠則さん

横尾忠則さん

 旭日旗のような光を背景に、派手な色で人やモノが張り込まれていく。1960年代から手がける「横尾調」のポスターは一度見たら忘れることがない。

 ポップアートと日本の土着性が結合したデザイン、などと評されてきた。「でも前近代的なものは好きじゃないし旭日旗も嫌い。60年代の米国文化に影響されたのに、自分の中にどうしようもなくある土着性をはき出したんです」

 近年の「Y字路」の絵画も、「もとは農道だったようなY字路に、近代的な家が立つ風景が多い」。デザインも絵画も、近代性と土着性が葛藤する自身の姿であり、つまりは日本人の自画像でもある。それゆえだろう、何をやっても時代と共振する。

幼いころから絵本や女優の写真を模写し、映画の看板屋になりたかった時代も。印刷所や新聞社で経験を積み、デザイン界のスターに。だが、ピカソ展を見て81年に画家宣言をする。「絵は70歳を過ぎて楽しくなった。五感と身体感覚で描いています」

 昨年、絵画やポスターなど数千点を兵庫県に寄贈・寄託することに。県は、専用の展示施設も検討している。

 「模写やコラージュが基本で独創性もないし、絵画はほとんど未完成です」

 自称「大いなる未完」の美術家は、だからまだまだ描き続ける。

      *

 よこお・ただのり
 1936年、兵庫県生まれ。神戸新聞社、日本デザインセンターを経て、フリーに。アングラ演劇のポスターなどがデザイン界に衝撃を与える。81年に画家宣言。95年に毎日芸術賞、00年ニューヨークADC殿堂入り、11年に旭日小綬章。小説「ぶるうらんど」で08年泉鏡花文学賞。

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◆今を奏でる革命家 冨田勲さん(79) 作曲家

冨田勲さん

冨田勲さん

 音響の革命家として、先人なき歩みを半世紀以上続ける。NHKラジオの第1と第2から同時に音を流す「立体音楽堂」に参加したのは1950年代のこと。カーンという拍子木の音が野を駆ける「新日本紀行」の音楽は、今なお強い印象を残している。

 何より、シンセサイザーの第一人者として世界に知られる。「電子音は、僕にとっては生音の延長で、全く自然なものなんです」

 オーストリアのドナウ川両岸に超立体音響を作り、8万人の聴衆を包むイベントも成功させた。若き日のマイケル・ジャクソンが「音を聴かせて」と突然自宅に来たことも。

 子どもたちの耳にも導かれてきた。手塚治虫のアニメ「ジャングル大帝」の音楽は、森に響き渡るライオンのおたけびから、リスがキョロキョロするしぐさに至るまで、森に生きる動物たちの営みを音で豊かに活写した。

 80歳を迎える今年、「最後」と銘打つ大作「イーハトーブ交響曲」を発表する予定だ。「光がキラキラ降り注ぐような」宮沢賢治のことばの宇宙に、愛する東北の車窓の風景を重ねてゆく。

 「いつも『これが最後』と思って曲を書いているんです。次の作品とか、先のこととかは、あまり考えない方がいい。子どもの心を忘れず、常に『今』に夢中でいたいですから」

      *

 とみた・いさお
 1932年、東京都生まれ。NHK大河ドラマ「花の生涯」やアニメ「ジャングル大帝」などの音楽を担当。70年代からシンセサイザーによる作編曲・演奏に取り組み、日本人初のグラミー賞4部門ノミネート。03年、映画「たそがれ清兵衛」の音楽で日本アカデミー賞最優秀音楽賞。

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◆切れ味鋭く女性学 上野千鶴子さん(63) 社会学者

上野千鶴子さん

上野千鶴子さん

 挑発的とも言える問題提起と切れ味鋭く鮮やかな論理で1980年代から、女性学、フェミニズムというジャンルを切り開いてきた。「理論と実践は車の両輪。女性学はフェミニズムという運動の理論的武器でもあります」

 主著「家父長制と資本制」(90年)では、女性差別が「心がけの問題」ではなく、経済的な構造に基礎づけられていることを明らかにした。

 ただ、この10年は「バックラッシュ(反動)」に苦しんだ。「ジェンダー研究や性教育への批判が高まり、フェミニズムというだけで男をたたく思想と短絡的に受け取られた」

 最近は、講演などで20~30代からの反応がよく、再び若い層からの関心が高まっているとも感じている。

  「してきた仕事を手渡したい。でもそれを受け取りたいと思う人がいなければ、片思いですから」と後進の育成にも力を注ぐ。4月からは立命館大学特別招聘教授として大学院生を指導する。

 自身の研究生活も続く。高齢者問題に射程を広げ、「おひとりさまの老後」はベストセラーに。昨年はこの10年の研究と実践を「ケアの社会学」にまとめた。

  「これまで自分の経験を言語化してきたから、経験が変わると主題も変わります。次は『おひとりさまの最期』にシフトしていくかもしれませんよ」

      *

 うえの・ちづこ
 1948年、富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程を修了し、京都精華大学教授などを経て、東京大学教授。94年に「近代家族の成立と終焉」でサントリー学芸賞。11年3月に東大を早期退職し、NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。東大名誉教授。

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◆悠久を精密に刻む 香取秀俊さん(47) 物理工学者

香取秀俊さん

香取秀俊さん

 100億年の時を刻んでも1秒も狂わない。そんな時計を開発した。

 「エジソンになりたかった」。壊れた家電を集めて、テレビゲームを作ったり、FM局を開設したり。回路図を眺めて1日過ごし、親から「勉強しなさい」とタンスの上に隠されたこともあった。

 開発した光格子時計は極限まで冷やして、光の入れ物「光格子」に閉じ込めた原子内を回る電子を「振り子」に使い、レーザー光ででその振動を読み出す。

 絶対零度まで下げるレーザー冷却法を1999年に開発した。光格子とは相性が悪いとされたレーザー冷却法だが、光の影響を打ち消す「魔法波長」を発見して問題を解決。レーザー冷却と光格子を同時に使えるようにした。

  「精密計測は昔からのあこがれ」。秒を小数点以下18桁の精度で測れる光格子時計の実現も近い。秒を定義する新しい国際標準の有力候補にもなっている。

高速で移動すると時間が遅れる相対論のウラシマ効果。歩いている人の時計は止まっている人より遅れる。新しい光格子時計は、この差もわかる夢の精度だ。

      *

 かとり・ひでとし
 1964年、東京都生まれ。88年東京大学工学部物理工学科卒業。91年東大大学院工学系研究科博士課程中退。94年独マックスプランク研究所客員研究員。2010年から東京大教授。06年日本IBM科学賞、08年ラビ賞、10年市村学術賞特別賞。11年から理化学研究所主任研究員を兼務。

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◆病気の根源に迫る 坂口志文さん(60) 免疫学者

坂口志文さん

坂口志文さん

  「自分」と「自分でないもの」の境界は、私たちの体を守る免疫の世界では、実はあいまいで流動的だ。その線引きをする細胞を発見した。「免疫学最後の大発見」とも評される。

 始まりは不思議なマウスだった。免疫反応の司令塔と言われるT細胞を生み出す胸腺を取り除くと、免疫は自分の臓器を攻撃し始め、T細胞を接種すると攻撃は治まった。T細胞の中に、ブレーキ役がいることを示す結果だった。

 免疫が自分を攻撃しない性質を「免疫寛容」というが完全ではない。暴走してある種のリウマチなど自己免疫疾患を引き起こす。

 「病気の根源を明らかにしたい」。10年かけて絞り込み、制御性T細胞として1995年に発表。「当時は注目されなかった」が、2000年代に分子機構も明らかにすると、注目度が高まった。

  この細胞を増やせば、自己免疫疾患を治療したり、移植した臓器の拒絶反応を抑えられたりする。減らせば、免疫力を強められるはず。欧米ではがん治療への応用が始まり、日本でも臨床試験を始めようと準備を進める。「免疫を突きつめて、病気の新しい治療法を開発したい」

 学会の合間に美術館を巡るのが好きだ。ルーブルで見たモナリザ。手のかたちから免疫の病気だったと疑っている。

      *

 さかぐち・しもん
 1951年、滋賀県生まれ。76年京都大学医学部卒業。米国ジョンズホプキンス大客員研究員、東京都老人総合研究所部門長などを経て99年に京都大教授、07年に京大再生医科学研究所長。11年4月から大阪大免疫学フロンティア研究センター教授。05年武田医学賞、08年慶応医学賞。

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