2013年度 朝日賞
◆精神科医 小阪憲司さん/「第2の認知症」を発見
早坂元興撮影
認知症の中に、アルツハイマー型とは異なる症状や特徴を示す「レビー小体型認知症」を世界で初めて見つけた。各国の研究者の間では、「小阪病」の呼び名で通じるという。
この認知症は大脳皮質に現れるレビー小体というたんぱく質の塊が原因で、実在しないものが見える幻視や動作が遅くなるパーキンソン症状などが特徴。うつ病などとも混同され、治療がうまくいかずに悩む患者や家族を救う道を切り開いた。
発見のきっかけは新米医師だった1960年代、名古屋市内の病院で認知症の女性を診たときだった。パーキンソン症状が目立ったが、文献に当てはまる説明はない。「アルツハイマー型とは違うのではないか」と疑問を抱いた。
女性は9年後、別の病気で亡くなった。脳を顕微鏡で見ると、大脳皮質に変わった塊があった。調べると、大脳皮質にはできないとされていたレビー小体だった。76年に定説を覆す論文を出した。
発見後、世界で次々と同じ症例が見つかり、96年には国際的な診断基準ができた。約200人の認知症患者の脳を調べた結果、レビー小体型は2割で、アルツハイマー型の5割に次いだ。国内の患者数は推計で約50万人に上るという。
発見から35年以上経ち、高齢化社会が来た。「認知症が注目される時代が来るとは」と驚く。今も診察を続けながら、「第2の認知症」の理解を広げるため、全国を回る。=(野中良祐)
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こさか・けんじ 1939年三重県生まれ。65年金沢大医学部卒。医学博士。2003年横浜市立大名誉教授。10年からメディカルケアコート・クリニック(横浜市)院長。