朝日賞 - The Asahi Prize -

2014(平成26)年度 受賞者一覧

◆坂茂さん ◆山田太一さん ◆大村智さん ◆ 満屋裕明さん
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◆建築家 坂茂さん/斬新な発想 被災地に光


 こんな建築家、他にほとんど例がないだろう。

 鉄やガラスでできた現代建築に、紙の管や木を大胆に導入してきた。仏北東部のポンピドーセンター分館では編み笠のような木造の大屋根を架け、今春開館の大分県立美術館は、ガラスの箱に木で竹工芸のような表情を与える。「人まねや、流行を追うのが嫌いなんです。独自の構造や素材を開発したかった」

 一方で阪神大震災以来、世界中の被災地に駆けつけ、仮設住宅などを造ってきた。「建築家は財力や政治力のある人の仕事は多くするのに、医者や弁護士のようには社会に役立っていない」という思いからだ。

 二つの活動は、不可分の関係にある。風土や材料の制約を重視した設計は被災地で役立ち、被災地の経験が思想を鍛える。ファクス用紙の芯をヒントに展覧会の会場構成に使い始めた紙管で仮設住宅を造り、移動式の美術館で使った貨物用コンテナは、宮城県女川町の3階建て仮設住宅に応用された。「高級住宅も仮設も、造るエネルギーや喜びは同じ」

 どんな建築にもカジュアルな美しさがあるのが、坂流だ。

 父は会社員で、母は服飾デザイナー。工作が得意だった少年は大工に憧れ、米国で学んで建築家の道へ。今は東京、パリ、ニューヨークに事務所を持ち、高校ラグビーで鍛えた体で、休みなく世界中を飛び回る。

 「これからも、おごらないこと。これほど多くの賞をいただくレベルにはまだ達していないんだから」。授賞式には、母デザインの服で臨むつもりだ。=(編集委員・大西若人)

      *

 ばん・しげる
 1957年東京生まれ。ハノーバー万博の日本館も手がけ、建築界のノーベル賞と呼ばれるプリツカー建築賞、毎日芸術賞など受賞多数。京都造形芸術大教授。

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◆脚本家 山田太一さん/ドラマで描く人と社会


早坂元興撮影

 去年2月に放送された「時は立ちどまらない」。東日本大震災をテレビドラマで描いた。

 家族も住む家もなくし、手を差し伸べられる側の「ありがとうというしかない無念」、「私が何をしたんだ」という吐き出せない思い。ドキュメンタリーでは難しい、人の負の感情を表現した。「ある時から日本人は苦労を毛嫌いするようになりました。けれど苦労を朗々と歌う演歌によっても、慰めを得ることができる。かなしむことで救われることもあるでしょう。人間はマイナスからも、感情を随分育てることができるのです」。作品は文化庁芸術祭大賞など、各賞を受けた。

 まだ傷痕が生々しい災害を題材に、フィクションを作ることはだれもがためらう。それを可能にしたのは、半世紀にわたり、テレビドラマという領域で先端を切り開いてきた存在だからだ。

 1977年の「岸辺のアルバム」では、専業主婦の孤独から高度経済成長の陰りをにじませ、4編15年にわたるロングランとなった「ふぞろいの林檎(りんご)たち」では、四流大学生を主人公に、学歴社会のヒエラルキーを浮き彫りにした。

 犯罪を主題にしない。ファンタジーは小説に譲って、ドラマではいつも小さな人間のリアルな物語から、大きな社会と時代を透かせて見せてきた。

 いま、テレビドラマは虚構と割り切る娯楽作が花盛り。「だからこそ、片隅で生きていけるかなと思っているのです」。鉛筆を手に、原稿用紙に向かう日々が続く。=(中島耕太郎)

      *

 やまだ・たいち
 1934年東京生まれ。早稲田大卒。松竹を経て65年独立。88年に小説「異人たちとの夏」で山本周五郎賞、2014年にエッセー集「月日の残像」で小林秀雄賞。

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◆北里大学特別栄誉教授 大村智さん/抗寄生虫薬 途上国救う


小玉重隆撮影

 各地で土や木の葉、川の水を集め、微生物がつくり出す化合物の中から480種余りの新規物質を見つけてきた。

 その一つが、放線菌がつくる抗生物質「エバーメクチン」。米製薬会社メルクとの共同研究で、北里大助教授だった1974年に静岡県伊東市のゴルフ場近くの土壌から見つけた。これを改良した抗寄生虫薬「イベルメクチン」は、牛や馬など家畜の消化管にすむ線虫を殺す効果が高く、動物薬として20年余り、売り上げ世界一を占めた。

 その後、ブユが媒介する寄生虫病で失明のおそれもある人間の感染症「河川盲目症」にも効くと判明。世界保健機関(WHO)は87年からメルクに無償提供を受け、アフリカなどの流行地で今後10年以内の制圧をめざす。治療と予防に年1億6千万人が飲む。「WHOのおかげで、多くの人に役立つ薬になった」と喜ぶ。誰もが人間の薬を探す中、「動物に効く薬は人にも効くはず」と動物薬探しに専念した。「人と同じことはしない」の信条で道を切り開いた。

 山梨大を卒業後、定時制高校の教師を経て研究者の道に。有機化学、微生物学、生化学を修めて有用物質を見つける力を培い、若いスタッフに支えられた。特許料収入で放線菌のゲノム解析など先端研究を進めたほか、89年には埼玉県に病院を建設。美術振興にも尽力する。

 「チャンスは準備した者のところにだけやってくるもの」。今日も財布に手のひら大のサンプル袋を2枚しのばせ、土や朽ち木に目を光らせる。=(小林舞子)

      *

 おおむら・さとし
 1935年山梨県生まれ。58年山梨大学芸学部卒。薬学博士、理学博士。北里大教授などを経て2007年から女子美術大理事長。13年北里大特別栄誉教授。

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◆熊本大学大学院教授 満屋裕明さん/エイズ治療薬を安価に


日吉健吾撮影

 製薬会社や研究所には、新薬などの候補として合成されながら使われなかった何百万もの化合物が、石ころのように死蔵されている。米国立がん研究所研究員だった1985年、その中から「宝石」を見つけた。世界初の抗エイズ薬「AZT」だ。

 エイズウイルス(HIV)は83年に発見されたばかり。感染経路も不明で「死に至る病」だったエイズの研究は、同じ研究室の同僚らから拒絶された。「君がやるなら私は研究所を辞める」と口論になったことも。1人になる夜中と早朝にひっそり続けた。後に治療が軌道に乗ると「あんなことを言って悪かった」と謝罪された。「多くの医師が患者の診療を拒否していたような時代。彼らだけが責められるべきではありません」

 AZTはウイルスの増殖を抑え、発症を遅らせる。だが、製薬会社は患者の負担が年100万円以上にもなる価格をつけた。「普通の人の手に入らない」。憤りを感じた。第2、第3の治療薬を開発し、安く供給されるよう努めた。おかげでAZTの価格は3分の1に下がった。新たに世に出した強力な治療薬「ダルナビル」は、途上国へ特許料なしで提供されている。

 エイズは薬を欠かさず飲めば普通に生活できる病気に変わった。だが、ウイルスが体内から消えるわけではない。一生薬を飲み続ける必要がある。

 30年間続けてきたエイズ治療薬の研究をこれからもやり続けるのが目標だ。「安くて副作用がなくて1週間に1回飲めばいい。そんな薬を届けたい」=(鍛治信太郎)

      *

  みつや・ひろあき
 1950年長崎県生まれ。75年熊本大医学部卒。医学博士。同大助手などを経て91年米国立がん研究所レトロウイルス感染症部長。97年から熊本大教授。

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