朝日賞 - The Asahi Prize -

2008(平成20)年度 朝日賞

▼トピックス
 
贈呈式、6氏を顕彰
朝日賞・大佛賞・大佛論壇賞
2008年度 朝日賞
4氏のスピーチ



贈呈式、6氏を顕彰
朝日賞・大佛賞・大佛論壇賞


記念撮影する(前列左から)別役実さん、水木しげるさん、澤地久枝さん、大隅良典さん。(後列左は)大佛次郎賞の飯嶋和一さん、(右は)大佛次郎論壇賞の湯浅誠さん=1月28日午後、東京・日比谷で

  学術、芸術などの分野で傑出した業績をあげた個人、団体に贈る08年度朝日賞、優れた散文作品をたたえる第35回大佛次郎賞、政治・経済・社会などを巡る優れた論考を顕彰する第8回大佛次郎論壇賞の合同贈呈式が1月28日、東京・日比谷の帝国ホテルであった。 朝日賞を受けた4人に正賞のブロンズ像と副賞500万円、大佛次郎賞と大佛次郎論壇賞の2人に賞牌(しょうはい)と副賞200万円がそれぞれ贈られた。

  朝日賞の作家、澤地久枝さんは「忘れられた死者たちに寄り添い、記録を残してきた。その人たちの中には私の父母、もしかしたら私の人生もある。78歳になってこんなご褒美をいただくのは本当に思いもかけないこと」と喜んだ。 劇作家、別役実さんは「20年前、(一緒に朝日賞を受けた)水木(しげる)先生と(贈呈式に招かれた)荒俣宏さんとおばけについて対談をしたが、2人はおばけの仲間で、私だけ人間。不条理作家としての自信を失った」と話し、会場を沸かせた。 細胞生物学者、大隅良典さんは「最近の科学は役に立つことばかり求めているが、科学する心を大切にすることが成熟した社会の試金石になると思う」とあいさつした。



(2009年1月29日付朝日新聞朝刊より)

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朝日賞4氏のスピーチ

◆創作好き、生まれつき 漫画家・水木しげるさん(86歳)

  受賞の喜びをしゃべろう、と思うと、どういうわけか(陸軍二等兵として敗戦を迎えたパプアニューギニアの)南方の島のことを思い出すんです。

(部隊を抜け出しては集落に行き)ヤシやパパイアがいくらでもなるので、それを食って寝ころんで暮らしていればいいんですね。勲章をもらったような気分で、毎日、愉快に暮らしていました。

 現地除隊しようかとも考えたんですが、軍医が「いっぺん日本に帰って、親の顔を見た方がいいんじゃないか」と言うので、それももっともだなあとそうしたんです。

 漫画を描くのは、生まれつきといってもいいくらい好きだったんですねえ。好きなこと以外はしない変な子どもで、算数なんか零点でしたから、親はものすごく心配していました。

 でも(漫画家になってから)かみさんはうまくやってくれるし、好きなことをしてメシが食えて、巨万の富も築いたわけですから(笑い)。長いあいだ描き続けてこられたひけつ? やっぱり、好きだったからですねえ。(友人の作家、荒俣宏さんが聞き手となった)
     ◇
 みずき・しげる 妖怪や戦争を題材とした幅広い創作による漫画文化への貢献

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◆豊かな縁に恵まれた 作家・澤地久枝さん

 昨年末のある日まで「朝日賞」は全く私には縁のないものでした。「朝日賞には無縁だけれど(正賞の)忠良さんのブロンズは欲しい」と制作者の佐藤忠良さんに申し上げてから、何年たったでしょう。

 この数年、時に空虚な気分に襲われました。一生けんめいに生きてきたけれど、一人の人間にできることは、こんなにもささやかだったのかという実感からです。人生とはこうしたものだと思いつつふっとむなしくなったのです。

 「昭和」という秘密とタブーずくめの怪物の時代に取りくみ隠れた事実の掘り起こしをしようとしてきました。おびただしい数の忘れられた死者たちに寄り添ってきましたがまだなすべきことは多く、命の持ち時間との競争では私に勝ち目はなさそうです。

 いいことはどんでん返しを伴うことを経験で知っています。1月28日が来る前に死ぬのではと、内心、思いました。しかし、実に豊かな人の縁に恵まれて生きてきて今日、ここに立てて幸せです。78歳になっていただくこのご褒美を分不相応とわきまえつつ。感謝します。
     ◇
 さわち・ひさえ 戦争へと至った昭和史の実相に迫るノンフィクションを著した業績

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◆新しい笑い作り出す 劇作家・別役実さん

 不条理劇が、我が国に紹介されてほぼ50年、半世紀がたち、かなり親しまれるようになりました。初期は、強面(こわもて)にしていたんですが、そういうことはなくなりまして親しみやすくなって、不条理劇を理由に拒絶されることはなくなりました。

 初期は「人間存在の不条理」という哲学的命題が多かったのですが、最近は「生活感覚の中にある不条理」がモチーフになっています。演劇自体も柔らかくなり、人々に問いやすくなってきている感じがするんです。私の作品を見た観客が「あれは不条理劇ですか?」と質問してきたりする。それぐらい生活感覚に不条理が入り込んだという感じです。強面の時代を考えると、さみしい感じもしますが、やりやすくなってきています。

 その中で関心を持っているのは「笑い」です。不条理劇はだいたい喜劇なのですが、不条理劇の作る笑いを、多様化して解読不能な現代に作用させると、ストレスの消化をよくするのでは、というのがございまして、今後、笑いの純粋培養装置としてのコントを中心に新しい笑いを作り出していこうと思っています。ありがとうございます。
     ◇
 べつやく・みのる 日本に不条理劇を定着させた長年にわたる優れた劇作活動

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◆科学する心を大切に 細胞生物学者・大隅良典さん

 酵母というちっぽけな生き物は、たった一つの細胞で「生」を営んでいます。しかし、私たちの細胞のモデルとして、生物学のいくつもの重要な問題の解明に貢献してきました。

 私たちも酵母の研究から、オートファジー(自食作用)という細胞内のたんぱく質分解機構の遺伝子を見つけました。それがいまでは生物の発生や免疫、アルツハイマーやがんなどの病気とのかかわりがわかってくるなど、様々な分野に発展している。感慨深いものがあります。

 私の一回り上の兄は歴史学者ですが、東京で貧しい学生生活を送っていたのに、帰省するたびに一冊ずつ、宇宙や遺伝子や進化などの本を買ってきてくれました。おかげで自然科学を志すようになったと思います。

 私の歩んだ道は細い細いものでしたが、本当に小さな発見が大きなうねりに育つことがあるのです。最近の科学はともすれば、役に立つことばかりを求めていますが、科学する心を大切にし、基礎研究を大事にする雰囲気こそ、成熟した社会の試金石だと思います。私の受賞が、科学をめざす若い人への励みになることを期待しています。
     ◇
 おおすみ・よしのり 細胞内分解系オートファジーの分子機構の解明

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2008年度 朝日賞

 ◇漫画家・水木しげるさん
   妖怪や戦争を題材とした幅広い創作による漫画文化への貢献
 ◇作家・澤地久枝さん
   戦争へと至った昭和史の実相に迫るノンフィクションを著した業績
 ◇劇作家・別役実さん
   日本に不条理劇を定着させた長年にわたる優れた劇作活動
 ◇自然科学研究機構基礎生物学研究所教授・大隅良典さん
   細胞内分解系オートファジーの分子機構の解明



▼選考委員(2008年度、敬称略)

 秋山耿太郎=委員長(朝日新聞文化財団理事長、朝日新聞社社長)
 亀山郁夫(東京外国語大学学長)
 岸本忠三(大阪大学大学院教授)
 北澤宏一(科学技術振興機構顧問)
 津島佑子(作家)
 三宅一生(デザイナー)
 養老孟司(東京大学名誉教授)
 米沢富美子(慶応義塾大学名誉教授)
 船橋洋一(朝日新聞社主筆)
 村松泰雄(朝日新聞社論説主幹)

主催 朝日新聞文化財団

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