朝日賞 - The Asahi Prize -

2009(平成21)年度 朝日賞

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贈呈式、7氏を顕彰
朝日賞・大佛賞・大佛論壇賞
2009年度 朝日賞
5氏のスピーチ



贈呈式、7氏を顕彰
朝日賞・大佛賞・大佛論壇賞


(左から)深谷賢治、豊島近、伊東豊雄、諏訪元、野田秀樹の5氏=1月28日午後、東京都千代田区で

  学術などの分野で傑出した業績をあげた個人、団体に贈る2009年度朝日賞、優れた散文作品をたたえる第36回大佛次郎賞、政治・経済・社会などの秀でた論考を顕彰する第9回大佛次郎論壇賞の合同贈呈式が28日、東京・日比谷の帝国ホテルであった。

  朝日賞を受けた5人に正賞のブロンズ像と副賞500万円、大佛次郎賞と大佛次郎論壇賞の2人に賞牌(しょうはい)と副賞200万円がそれぞれ贈られた。

 朝日賞の建築家の伊東豊雄さんは「設計を始めて40年たったいま、二つの夢がある。生命体のように呼吸する建築をつくること、そのような新しい建築原理に共感する若い建築家や職人を養成すること」と今後の抱負を語った。

 劇作家の野田秀樹さんは「わがままな私につきあってくれた仲間に感謝したい」と切り出し、「幼児性という病と闘った闘病史」と自らの演劇活動を表現。「今回の賞は、やっかいな病と闘い続けた患者である私が治ったことへの励まし。でも本当は治っていないし、治る気もないんですが」と会場を沸かせた。

  数学者の深谷賢治さんは「シンプレクティック幾何学」など難解な数学の世界を紹介したうえで、「これだけ面白いものは世の中にめったにない。そういうことで賞をいただくのはたいへん申し訳ない」と締めくくった。



(2010年1月29日朝日新聞朝刊より)

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朝日賞5氏のスピーチ

◆二つの夢、実現したい 建築家・伊東豊雄さん

 今の日本は将来の夢を描けない時代です。このような時代に、建築でどのような夢を描けるのかと、考えています。

 私には二つの夢があります。一つが「生命体のように呼吸する建築をつくりたい」という夢です。

 20世紀は「工業主義的な建築、機械のような建築」が求められました。性能は良いけれども、地上レベルでも地上100メートルでも同じ性能を得られる建築が世の中を埋めてしまいました。

 私は今、もう少しその場所でしかできない建築をつくれないかと考えています。決して近代以前に戻るということではありません。コンピューターのテクノロジーを使うことで、もう一度手づくりの建築ができるのではないかと思っています。

 もう一つが「そのような建築原理に共感する若い建築家や職人を育てたい」という夢です。いま愛媛県今治市が私個人の小さなミュージアムを企画しています。ここを拠点に、新しい建築原理を生み出す塾をつくりたいと思っています。
     ◇
 いとう・とよお 現代建築における空間表現の可能性を広げた業績

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◆精神技術、伴う文化に 劇作家・演出家・俳優の野田秀樹さん

 賞罰、功罪と言います。受賞を機に、逆に日本の演劇や文化状況にどんな罪を犯してきたかを殊勝に考えました。

 創造性やモノ作りは、幼児性と深くかかわっています。僕も幼児性をフルに発揮して芝居を作ってきました。ただ、今の文化には、無批判で無防備な幼児性がはびこっています。自分には、その状況の先陣を切ってしまったのではないかと、若干、痛恨の思いがあります。

 演劇を始めたころは、言葉中心の、しかつめらしい文化の時代でした。そこに切り込むのに、自分の幼児性は役立ちました。でも、批評性はあったと自負しています。江戸文化も幼児性が強いのですが、「精神技術」が高かったと思います。

 30代半ばに、そのことに気づき、僕は、精神技術の必要性を感じて、文化が成熟しているヨーロッパに目を向けました。精神技術の手練手管に向かう姿勢を続ける中で、海外への扉も開かれたのだと思います。だから、アニメといった海外で人気の日本文化も、精神技術を伴わないと、いずれあきられ、消費されてしまうでしょう。
     ◇
 のだ・ひでき 新しい現代演劇の開拓と海外交流の推進

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◆800ページの証明、実は単純 数学者・深谷賢治さん

 昨年、共同研究の成果を本にしました。数学の証明が800ページ書いてあって、数学者でも大変そうだからと読んでくれないのではないかと思います。では、それが複雑で技巧的かというと違って、単純で自然なことをやっている。伝達しようと思うと、そうなってしまうのが不思議です。

 人間が面している世界が、個人の手に負えなくなってきている気がします。科学の先端でやっていることは巨大で何千億円とかかる。数学も、使うのは鉛筆とノートで変わらなくても、ガリレオが望遠鏡をのぞいていた時代の数学と今の数学とでは同じような差があります。

 数学でいう応用は、既存の数学の問題を解くのに使えること。数学で生活が便利になる、金がもうかるといった応用までは100年くらいかかります。

 では何のために役に立つかというと、自分が楽しむために役立つ。世の中、面白いことはそれほどないが、数学は千年くらいいろんな人が飽きずにやっている。そういうわけのわからない人間をちゃんと理解していただいた家族に感謝したいです。
     ◇
 ふかや・けんじ シンプレクティック幾何学の研究

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◆無数の点が支え合う 構造生物学者・豊島近さん

 私は、カルシウムポンプというたんぱく質の働きを、立体構造から明らかにしています。このたんぱく質は、千個のアミノ酸が連なったものです。

 私が理解したのは、たんぱく質はあまりによくできているということです。千個のアミノ酸がいくつもの役割を同時にこなしている。しかも、たんぱく質はふらふらしているものなのに、その中でしっかり機能を果たしています。

 このようなデザインは、とても人間にはできません。このたんぱく質を作ってきたものは、神様でなければ、時間しかない。私は、20年かかってようやく1個のたんぱく質を理解できたと思っています。一生かかって、せいぜいあと数個でしょう。自分の能力なり、与えられた時間はその程度のものでしかない。

 見えないたんぱく質を研究することで、想像力をはるかに超えた時空間の中で、点にもならない自分という存在を強烈に理解させられました。しかし、無数の点はつながり、支え合っている。ほかの点にとって少しでも役に立つことをしたいと思います。
     ◇
 とよしま・ちかし カルシウムポンプの構造と働きの解明

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◆人の進化にチャレンジ 自然人類学者・諏訪元さん

 人はみな人間のことを考えているので世界中みんなが人類学者です。そのなかで我々、自然人類学者は生物の進化の歴史の産物としての人間を研究します。それには野外調査で証拠を積み上げる地道な活動が不可欠です。

 ながらく「人類の歴史400万年」といわれてきましたが、その壁を実質的に乗り越えたのが、ラミダス猿人の発見と一連の研究成果であると、研究チーム一同感じています。

 440万年前の初期人類、ラミダス猿人には、「アルディピテクス・ラミダス」という学名が与えられました。現地のアファール民族の言葉で、「地上のサルのルーツ」の意味です。人類の系統の最も根元に相当する、と当時から予測していました。

 1994年から、全身にわたる化石が発見されました。その全容が現れたとき、一体どう理解し、世に送り出すか。大きなチャレンジが始まり、黙々と挑みながらも年月は過ぎ、ここ数年は焦燥感も大きくなっていました。昨年、成果発表を実現し、科学的な責務を果たせたと考えています。
     ◇
 すわ・げん ラミダス猿人など初期人類の進化に関する研究

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2009年度 朝日賞

 ◇建築家 伊東豊雄さん
   現代建築における空間表現の可能性を広げた業績
 ◇劇作家・演出家・俳優 野田秀樹さん
   新しい現代演劇の開拓と海外交流の推進
 ◇数学者 深谷賢治さん
   シンプレクティック幾何学の研究
 ◇構造生物学者 豊島近さん
   カルシウムポンプ作動機構の解明
 ◇自然人類学者 諏訪元さん
   ラミダス猿人など初期人類の進化に関する研究



▼選考委員(2009年度、敬称略)

 秋山耿太郎=委員長(朝日新聞文化財団理事長、朝日新聞社社長)
 亀山郁夫(東京外国語大学学長)
 岸本忠三(大阪大学大学院教授)
 北澤宏一(科学技術振興機構顧問)
 津島佑子(作家)
 三宅一生(デザイナー)
 養老孟司(東京大学名誉教授)
 米沢富美子(慶応義塾大学名誉教授)
 船橋洋一(朝日新聞社主筆)
 村松泰雄(朝日新聞社論説主幹)

主催 朝日新聞文化財団

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