朝日賞 - The Asahi Prize -

2010(平成22)年度 朝日賞

▼トピックス
 
贈呈式、5氏2団体に
朝日賞・大佛賞・大佛論壇賞・朝日スポーツ賞
2010年度 朝日賞
3氏1団体スピーチ



贈呈式、5氏2団体に
朝日賞・大佛賞・大佛論壇賞・朝日スポーツ賞


(前列左から)川口淳一郎さん、原田正純さん、池澤夏樹さん、細野秀雄さん。(後列左から)土屋和雄さん、萩野慎二さん

 学術や芸術などの分野で傑出した業績をあげた個人や団体に贈る2010年度朝日賞、優れた散文作品をたたえる第37回大佛(おさらぎ)次郎賞、政治・経済・社会などについての秀でた論考への第10回大佛次郎論壇賞、スポーツ分野で優れた成果をあげた個人や団体を対象とした10年度朝日スポーツ賞の合同贈呈式が27日、東京・日比谷の帝国ホテルで開かれた。

  朝日賞を受けた3人1団体に正賞のブロンズ像と副賞500万円、大佛次郎賞と大佛次郎論壇賞の2人に賞牌(しょうはい)と200万円、朝日スポーツ賞の2010FIFAワールドカップ(W杯)日本代表チームにはレリーフと200万円がそれぞれ贈られた。

 朝日賞の作家、池澤夏樹さんは、文学を「幼なじみの女神」と呼び、「今の社会は経済にあおられてすごい速さで進んでいる。我々は時に立ち止まって人間らしさを取り戻さなければならず、文学はとても有効な手段」と語った。

 探査機「はやぶさ」プロジェクトチーム代表の川口淳一郎さんは、街で「砂が入ってるといいですね」と声をかけられた逸話で会場をわかせ、若い人たちの挑戦を支える雰囲気作りをしたいと話した。

(2011年1月28日朝日新聞朝刊より)

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朝日賞3氏1団体のスピーチ

◆人間らしさ、文学が取り戻す  池澤夏樹さん

池澤夏樹さん

池澤夏樹さん

 文学に初めて出会ったのは小学生の頃、創元社の『世界少年少女文学全集』全32巻が自分のものになった時でした。文学の女神は幼なじみです。すばらしい美少女でした。ぼくが大きくなるにつれてますます美しく豊満になり、いつも憧れていました。終始読む側でいたのです。

 一緒になってくれと頼むのはためらわれました。断られたら一生独身で過ごすことになる。40歳近くになって勇を鼓して彼女の手を求め、幸い彼女は受け入れてくれました。実はそれからが本当の性格がわかって、振り回されて艱難(かんなん)辛苦であったのですが。

 個人編集の『世界文学全集』では古典を脇にどけて、もっぱら20世紀も後半の作品を選んだ結果、いろいろなことがわかりました。今の社会は経済にあおられて、非人間的なまでの速さで進んでいる。人間らしさを取り戻すために文学はとても有効なのです。全集に石牟礼道子さんの『苦海浄土』を入れたことを誇りに思います。経済にあおられて社会が壊してしまったものを丁寧に書いておられる。

 これからしばらくは書く方に力を注ぎます。お力をお貸しいただきたいと思います。
     ◇
 いけざわ・なつき 世界的視野に基づく創作・評論活動と文学全集の編集

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◆水俣学 みんなで探求したい  原田正純さん

原田正純さん

原田正純さん

 予想外の賞をいただきまして、びっくりしております。医者が患者をみることは、お百姓さんがお米を作るようなことで、ごく普通のことです。普通のことで、このような賞をいただいた、ということは、大変うれしく、誇りにも思っております。

 医学は進歩したといいましても、まだまだ治せない病気はたくさんあります。それらの病気の一つでも治そうと思って、医師たちが一生懸命に日夜努力をしている。

 その一方で、水俣のように、何万という人の健康が破壊され、かつての三井三池炭鉱で一瞬にして400余人の方が亡くなり、900人近くが後遺症に悩む。安全と思って食べた油に毒物が入っていて、1万3千人が、今も悩んでいる。このことを、一体、どう考えたらいいんだろう。

 医学の進歩と治せない病気の間で、それを考える一つの手段として「水俣学」なんて、おこがましいことをいいながら、みんなで、その答えを探っております。賞をいただくことで、若い人たちにも水俣学が受け継がれていくのではないかと考えています。これを出発点に、さらに探求したいと思っています。
     ◇
 はらだ・まさずみ 水俣病研究を通した学際的な「水俣学」の提唱と深化

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◆若い世代の挑戦 支えたい  「はやぶさ」プロジェクトチーム
 川口淳一郎さん 萩野慎二さん 土屋和雄さん


(左から) 川口さん、萩野さん、土屋さん

 カプセル帰還の翌日に、サッカーワールドカップの日本代表の試合がありました。帰還が万一失敗してもサッカーが取り戻してくれるんじゃないかと、率直なところそう思っていました。

 カプセルが帰ってきて、いろんな方からありがたい言葉を頂きました。帰還翌日の記者会見後、コンビニで野菜ジュースを買ったんですが、店員さんが私の顔をまじまじと見て、「砂が入ってるといいですね」。本当に、砂が入っていてよかったなと。
     *
 大変たくさんの方から呼ばれて、講演させて頂いています。いまこの時期だからこそいろんなことをお話しして、もっと若い世代が果敢にいろんなことに挑戦していける雰囲気作りをしていきたいと思います。(かわぐち・じゅんいちろう)
     *
 産業界ではおそらく150社を超える会社が一致団結しました。企業だけではありません。発射場に行ってからチームをまとめてくださったのは、地元の旅館のおばさんたちです。広い層に支えられました。(はぎの・しんじ)
     *
 プロジェクトが始まった時に若手と呼ばれた方々が、プロジェクトで鍛えられ、宇宙工学のリーダーとして各地の大学で若手を育てています。地道な努力に光を当てて頂いたことを非常にうれしく思います。(つちや・かずお)
     ◇
 産官学の協力による世界初の小惑星探査往復飛行(写真は左から、川口さん、萩野さん、土屋さん)

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◆画期的物質 もっと見つける  細野秀雄さん

細野秀雄さん

細野秀雄さん

 材料研究は長い歴史のある分野です。だから、もう「鉱脈」はないという声を聞きます。私自身、画期的なことが出るのかと心配になったこともありました。だが、世の中にこんな面白いことが続けて起こるのだろうかということが実際に起きた。「本当か」とほっぺたをつねりました。

 冷静に見ると、世の中には面白いことがたくさん隠れているのですが、本気になって探している人は少ない。

 自分たちが見つけた物質が世界の研究の潮流となり、社会的困難を解決できるのは、材料研究者のだいご味です。

 今、資源危機が問題になっています。材料研究の強さが、日本の国際競争力の源泉なのですが、今はだんだんと優位性が揺らいでいます。天然資源が少ない日本だからこそ、もう一段、ジャンプアップする必要があります。

 研究者の大切な3条件は、知的好奇心が強いこと、執拗(しつよう)であること、そして楽天的であることと言われます。私はもう一つあると思います。「生意気であること」です。自分は少なくとも「楽天的」「生意気」の2条件は満たしていると思います。それを生かし、あと二つ、三つの「新大陸」を見つけたいです。
     ◇
 ほその・ひでお 透明酸化物半導体・金属の創出

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2010年度 朝日賞

 ◇池澤夏樹さん
   世界的視野に基づく創作・評論活動と文学全集の編集
 ◇原田正純さん
   水俣病研究を通した学際的な「水俣学」の提唱と深化
 ◇探査機「はやぶさ」プロジェクトチーム
  (チーム代表・川口淳一郎さん 産業界代表・萩野慎二さん 学術界代表・土屋和雄さん)
   産官学の協力による世界初の小惑星探査往復飛行
 ◇細野秀雄さん
   透明酸化物半導体・金属の創出



▼選考委員(2010年度、敬称略)

 秋山耿太郎=委員長(朝日新聞文化財団理事長、朝日新聞社社長)
 亀山郁夫(東京外国語大学学長)
 岸本忠三(大阪大学大学院教授)
 北澤宏一(科学技術振興機構顧問)
 津島佑子(作家)
 三宅一生(デザイナー)
 養老孟司(東京大学名誉教授)
 米沢富美子(慶応義塾大学名誉教授)
 船橋洋一(朝日新聞社主筆=選考時)
 大軒由敬(朝日新聞社論説主幹)

主催 朝日新聞文化財団

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