朝日賞 - The Asahi Prize -  

贈呈式で5氏が喜びを語る 2015年度朝日賞

受賞者

贈呈式に出席した(左から)金子兜太さん、村井眞二さん、山本正幸さん、渡辺嘉典さん
=1月29日、帝国ホテル

 2015年度朝日賞の贈呈式と祝賀パーティーが1月29日、東京都千代田区の帝国ホテルで開かれた。受賞した指揮者の大野和士さん、俳人の金子兜太さん、大阪大学名誉教授の村井眞二さん、基礎生物学研究所所長の山本正幸さん、東京大学分子細胞生物学研究所教授の渡辺嘉典さんに、渡辺雅隆・朝日新聞文化財団理事長から正賞のブロンズ像と、1件につき500万円の副賞が贈られた。

 大野さんは当日、フランス国立リヨン歌劇場での公演があるため代理出席となったが、会場とインターネットで結ばれた動画中継で、熱のこもったあいさつをした。金子さんはこの日のために詠んだ句「朝日出(い)づ枯蓮(かれはす)に若き白鷺(しらさぎ)」を披露。科学者の村井眞二さん、山本正幸さん、渡辺嘉典さんもそれぞれ、用意したグラフや若い頃の写真などをスクリーンに映しながら、周囲への感謝の気持ちを交えて受賞の喜びを語った。

 朝日スポーツ賞などと合同で開かれた祝賀パーティーには、昨年度の朝日賞受賞者でノーベル医学・生理学賞を受けた大村智さん、遠藤利明・五輪担当大臣もかけつけた。

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受賞者5氏のスピーチ

◆作曲家の魂、届ける 指揮者・大野和士さん

指揮者・大野和士さん

大野和士さん

 フランス国立リヨン歌劇場でのオペラ公演指揮を控え、現地からインターネット中継で受賞の喜びを伝えた。
     ◇
 これからの叱咤激励という意味の賞だと感じています。

 リヨン国立歌劇場で今夜、オペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」を指揮します。ショスタコービチがスターリン政権下で書いた作品で、私が手がけるのは3回目。商家に嫁いだカテリーナと使用人セルゲイの激しい恋などを描く轟々とした音のエネルギーがいちばんの聞きどころと思われてきたが、今までとは違う面を発見できました。

 殺された夫を地下室に運ぶ深刻な場面。(「パパパパッ」と口ずさみながら)鳴り響く轟音以上に、クラリネット2本だけの滑稽な音楽が命や行為の軽さを表している。カテリーナが「キスして」と妄想としか言えないような感情で繰り返し歌うのも、人間の深い情念を描いている。

 こういう経験を積み、作曲家たちの魂をできるだけくんで聴衆に届けたい。受賞を、成長のための大きな力として、胸の中に受け止めたい。
     ◇
 おおの・かずし 指揮者としての国内外における精力的な活動



◆「存在者」に徹する 俳人・金子兜太さん

俳人・金子兜太さん

金子兜太さん

 私は「存在者」というものの魅力を俳句に持ち込み、俳句を支えてきたと自負しています。存在者とは「そのまま」で生きている人間。いわば生の人間。率直にものを言う人たち。存在者として魅力のない者はダメだ――。これが人間観の基本です。

 父は埼玉県の秩父の開業医で、俳句をやっていました。俳句会を開くと青年たちが集まってきます。ところが酒が入り、けんかが始まる。母は怒って「兜太、俳句なんかするんじゃないよ」と言う。しかし、私が触れたのは存在者たちの姿です。それを通じて「知的野生」ということを教わりました。

 存在者の魅力を確認したのは戦争です。私は25歳から27歳まで南方のトラック島で海軍施設部の隊におりました。そこの工員さんたちは秩父の青年たちより、さらに存在者の塊のようでした。その愛する人たちがたくさん死んでしまった。それは痛みとなって残っています。

 私自身、存在者として徹底した生き方をしたい。存在者のために生涯を捧げたいと思っています。
     ◇
 かねこ・とうた 戦後一貫して現代俳句を牽引

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◆強い信念、道ひらく 化学者・村井眞二さん

化学者・村井眞二さん

村井眞二さん

 サイエンスの進歩には地道な積み重ねも、突然の飛躍もあり、どちらも大事ですが、私は無精なので飛躍ばかり狙ってきました。

 私の研究は、炭素と水素の結合を切り、ものづくりに生かすことができたということです。1960年代に大量の金属を使えば切れることは見つかっていましたが、ものづくりに向きません。世界中が金属の量を減らすのを目指して30年間、これは無理だという気分が広がっていたときに夢追い作業に参画しました。

 何をやってもうまくいかない日が続きましたが、突然、視界が開け、今までにない手法を見いだしました。あっという間に世界中が追いかけ、大きな分野になりました。幸運は、信念の強いところにやってきます。目標が揺るぎないのが私たちの財産でした。

 金子さんにあやかって、俳句を用意しました。「瞳(まなこ)燃ゆ この子の凧(たこ)は あがるべし」。作者は母で、私が4、5歳のころです。妻が気に入り、書にしました。芸術と学術を同じ舞台に上げていただき、この上ない喜びです。
     ◇
 むらい・しんじ 不活性結合の活性化に基づく革新的合成手法の開拓

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◆「生命」究める人材続く 分子生物学者、山本正幸さん・渡辺嘉典さん

山本正幸さん

分子生物学者、山本正幸さん

山本正幸さん

 大学院生、スタッフとともに楽しく研究してきました。解きたかった減数分裂の問題も解答が得られました。賞をいただこうがいただくまいが、研究者として幸せな生活でした。今回、晴れがましい賞をいただき、何か想定外のものを背負ったような気がします。

 生物としての人類は一瞬の判断が生死を分けることを何度も経験している。状況の把握は生存に不可欠で、物事を考え理解することが基本的に好きなんだと思います。世界はどう成り立っているか、生命とは何か、時に寝食を忘れて研究に打ち込む人たちがいる。こうした人材を活用しない手はないと思います。

 個人的な話では、ワルシャワのショパンコンクールに出かけ、若者がすべてをぶつける演奏を聞いています。このコンクールで2位になった内田光子さんが1996年度の朝日賞受賞者。同じレベルで褒めてもらえうれしいです。

分子生物学者・渡辺嘉典さん

渡辺嘉典さん

渡辺嘉典さん

 ヒトは、両親の遺伝物質である染色体を半分ずつ持ち寄って、受精卵から一人の人間になります。私たちは、その染色体を半分に減らす減数分裂のメカニズムのなかで、非常に重要なたんぱく質「シュゴシン」を見つけました。

 それは生殖によって子孫を残す全ての生物が持っていることも分かりました。最近では高校の教科書にも載るようになりました。

 一人前の生命科学者になるには20年かかるそうです。私は20年間、山本先生とともに研究をさせていただき、そして自分で研究室を立ち上げ、今回の賞に値する仕事をすることもできた。山本先生に育てていただいたおかげです。

 我々の研究はすぐには役立つものではないが、基礎研究はいずれ応用研究につながり、最終的には世の中の役に立ちます。今回の受賞をきっかけに、もっと多くの若い世代の研究者が、チャレンジングな気持ちで参入されることを希望します。
     ◇
 やまもと・まさゆき / わたなべ・よしのり 減数分裂にかかわる分子機構の解明

 

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2015年度 朝日賞、4件、5氏に

 2015年度の朝日賞は次の4件、5氏に決まりました。29日に東京・日比谷の帝国ホテルで贈呈式を開き、正賞のブロンズ像と副賞(1件500万円)を贈ります。(敬称略、順不同)

 ◇大野 和士さん
   指揮者としての国内外における精力的な活動
 ◇金子 兜太さん
   戦後一貫して現代俳句を牽引
 ◇村井 眞二さん
   不活性結合の活性化に基づく革新的合成手法の開拓
 ◇山本 正幸さん
  渡辺 嘉典さん
   減数分裂にかかわる分子機構の解明

主催 朝日新聞文化財団

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