朝日賞 - The Asahi Prize -  

受賞者スピーチ 2017年度朝日賞

受賞者

朝日賞を受賞した(左から)北川フラムさん、瀬戸内寂聴さん、甲元真人さん、柳沢正史さん
=1月31日、帝国ホテル

 2017年度朝日賞の贈呈式が1月31日、東京都千代田区の帝国ホテルで開かれました。
受賞した北川フラムさん、瀬戸内寂聴さん、甲元真人さん、柳沢正史さんのスピーチを紹介します。

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受賞者のスピーチ

◆ 「芸術祭、土地に元気」 アートディレクター・北川フラムさん

アートディレクター・北川フラムさん

北川フラムさん

 芸術祭は、絵画や彫刻の展覧会を田舎でやることとは、かなり違います。

 大地の芸術祭は、「平成の大合併」のときの施策の一つでした。私は新潟県十日町市に入り、驚きました。日本一の米どころとなり多くの人口を抱えた地域が、効率が悪いと根切りにされていく姿を見ました。

 一方でここに通ううちに、幸せとは知っている人とあいさつができること、過酷な自然と折り合って親しんでいくことだと思いました。この土地が元気にならないかと考えました。

 跡を継ぐ人がいない田んぼや空き家、廃校。そういう場所にアーティストが入り、土地の魅力を発見していきます。地域の人との協働が生まれ、食やパフォーマンス、音楽や芝居などの一種の祭りになりました。

 そこに都市から多くの人が訪れ、一昨年の瀬戸内国際芸術祭には外国のサポーターも多く入り、その人々がつながっていく。ネット社会になる一方、世界がつながるには、人と人がつながり、人の土地を歩いてそこを知ることが、今かなり重要になっています。

 芸術祭は地域の色々なことをもう一度考える大きな手立て。時代が大きく変わる中、美術が果たした役割は大きいと思っています。
     ◇
 きたがわ・ふらむ 里山や島々を舞台にした芸術祭での地域・文化の活性化

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◆ 「死ぬまで書きたい」 作家・僧侶、瀬戸内寂聴さん

作家・僧侶、瀬戸内寂聴さん

瀬戸内寂聴さん

 今度の5月15日で96になります。そんな風に長く生きると思っていませんでした。この後どうしていいか分からないと思っていたら大きな賞を頂きまして、「また生きなきゃならないかな」と思っています。

 70年前から他の仕事は何にもしないで、ものを書くことしかしておりません。書いて生きさせて下さったのは、世の中。私の力ではないと思います。400冊以上本が出たようですが、いくつか世の中のためになるかもしれない本も書きました。そんな意味で、賞を頂いたんだと思います。

 死ぬまで書いていこうと思います。他のことはできません。書くには全てのことを捨てるしかありません。そういうことを、長い生涯で悟りました。そして自分の人生を「良かった」と今、思っております。

 私は「人生は愛することだ」ということをずっと書いてきました。それはどういうことか。「人を許すこと」だと思います。私たちは何かに許されて生きています。同時に、何かを許して生きていかねばならない。それが「人間が生きること」だと考えています。

 いつ死んでもいい。命があれば、もう二つ、ちょっと書いて死にたい。皆さん応援してください。
     ◇
 せとうち・じゃくちょう 女性の地位を向上させた作家活動や平和への社会活動

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◆ 「物性物理を活性化」 理論物理学者・甲元真人さん

理論物理学者・甲元真人さん

甲元真人さん

 私の研究の出発点は、「量子ホール効果」という物理現象です。半導体に磁場をかけた際に生じる「ホール抵抗」という電気抵抗が不思議なふるまいをします。この抵抗の逆数は、物理学の基本定数に1、2、3……という整数をかけた値になります。

 話は変わって「トポロジー」とは、連続的な変形で変わらない図形の性質を調べる数学の分野です。ここに紙のリボンで作った二つの輪があります。一つは1回ねじってあります。この二つはどのようにひねくり回しても、同じ輪にはなりません。

 このように、つながり具合が違うことを「トポロジーが違う」と言います。輪は何回ねじったかで区別することができ、「量子ホール効果」と似ています。似ているだけでなく、本質的に同じだと明らかにしたのが、私たちの仕事です。

 1985年に発表した私の論文で、ホール抵抗の整数はある種のねじった回数に正確に対応することを証明しました。量子ホール効果の本質はトポロジーです。

 この論文がきっかけとなり、トポロジーを用いる物性物理学は、現代の物理学で最も活発な分野になっています。
     ◇
 こうもと・まひと トポロジー(位相幾何学)の物性物理学への導入

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◆ 「真実は仮説より奇」 睡眠科学者・柳沢正史さん

睡眠科学者・柳沢正史さん

柳沢正史さん

 私の師匠である、真崎知生先生が1991年度に朝日賞を受賞し、さらにその師匠の江橋節郎先生も68年度に受賞されています。「親子3代」にわたる受賞で、大変うれしいです。

 座右の銘の一つは、「真実は仮説より奇なり」。オレキシンを発見した時、睡眠や覚醒に関わるとは思いませんでした。仮説は人間が小さな頭脳で考えたストーリーに過ぎず、自然のメカニズムはもっと大きいのです。自分の仮説をデータより上に置くことは、科学者には許されません。研究不正に立ち向かう上でも自戒としています。

 私が発見した二つの体内物質、エンドセリンとオレキシンは全く新しい医薬に結びつき、臨床現場に使われています。誰かの役に立つことは、研究者として非常にうれしい。しかし、私のモチベーションはすぐに役立つということではなく、新しいことを知ること自体にかけがえのない価値があるということです。

 現在、内閣府で国立大学の経営改革促進について議論されていますが、「投資に見合うリターン」などの言葉が並びます。「役に立ってなんぼ」という考えを政治家や官僚が変えない限り、日本の科学技術は滅んでしまいます。
     ◇
 やなぎさわ・まさし オレキシンの発見と睡眠・覚醒に関する研究

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2017年度 朝日賞受賞者一覧

  ◇北川フラムさん   里山や島々を舞台にした芸術祭での地域・文化の活性化
  ◇瀬戸内寂聴さん   女性の地位を向上させた作家活動や平和への社会活動
  ◇甲元 真人さん   トポロジーの物性物理学への導入
  ◇柳沢 正史さん   オレキシンの発見と睡眠・覚醒に関する研究

主催 朝日新聞文化財団

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