朝日のびのび教育賞第11回(2009年度)

朝日のびのび教育賞・第11回受賞の5団体紹介

2009年10月25日 朝刊

 地域と連携した、教育の優れた実践活動を顕彰する「朝日のびのび教育賞」。その第11回の受賞5団体が決まった。今回は全国から217件の応募、推薦が寄せられ、朝日新聞記者による現地調査と数次の社内選考で決定した。

 地道な活動で大きな成果を上げている各団体の取り組みを紹介する。

北海道留萌千望高等学校(北海道)/地元食材いかし街を活性化

写真「フードフェア」で試食を用意し、来場者を迎える生徒ら=札幌市

 10月上旬、札幌市で開かれた「北海道・フードフェア2009」。加工食品を扱う約30の業者や団体が集まるなか、留萌千望高校は高校で唯一参加した。

 生地にもち米を練り込んだ「もっちり米パスタ」、赤カブで着色した「真っ赤なビーツの福神漬」、そして「鰊(にしん)そぼろ」を出品。生徒が考案し、地元の製めん、青果、水産会社が協力して商品化にこぎ着けた。

 商品になったものをいかに知ってもらい、買ってもらうか。フェア参加は販売促進の実習の場だ。「高校生が開発しました。ご試食いかがですか」。来場者にPRした木村沙耶加さんは(2年)は「少しでも売れて地元の企業や農家の利益になったらうれしい」。フェアで発表した「ビーツ」は札幌の百貨店に置かれる予定だ。

 5年前、北海道教育委員会の起業家教育実践研究事業の指定校になった。地域貢献を目標に地域食材を使った商品開発の取り組みが始まり、「ビーツ」などが生まれた。道の西田俊夫・留萌支庁長は「産官学が連携して地域活性化に取り組む高校生版モデルケース」と話す。

日本わら細工伝承大学校(岐阜県)/米作り通じて生き方学ぶ

写真子どもらと稲刈りの機械を押す谷口さん(中央)=岐阜県高山市

 岐阜県高山市郊外。市中心街にある市立西小の5年生約40人は、田の稲を手と機械で刈り、乾燥させるため「稲架(はさ)がけ」にした。

 日本わら細工伝承大学校、通称「わら大学」。子どもたちから「谷口師匠」と呼ばれる校長の谷口岩雄さん(79)は流れた汗をぬぐった後、子どもたちに1枚の絵を見せ、「さて、何をしているところかわかるか」と問いかけた。

 フランスの画家ミレーが約150年前に描いた「落ち穂拾い」。貧しい農民たちが、生きるために麦の穂を拾った姿を描いたとされる。絵の簡単な解説をしてから、「この絵のことを忘れないでください。落ち穂をみんなで拾ってください」と語りかけた。

 春の田植えから脱穀後の12月に開く収穫祭まで。子どもたちと米作りを体験し、熱く語る。西小の小瀬結菜さんは春、「米作りは八十八の手間がかかるから『米』と書く」と言われたことをはっきり覚えていた。

 「発想力も創造力も環境を守ることも、わらから学んだ。わら文化の魂を伝えたい」。師匠の真剣な思いだ。

大阪府立農芸高等学校資源動物科ふれあい動物部(大阪府)/動物と共に地域と交流

写真部員と小学生が一緒に動物とふれあった=堺市美原区の大阪府立農芸高校

 「かわいい」「ふわふわして気持ちいい」。大阪府立農芸高校(堺市)の一角で、子どもたちの歓声が上がった。「ふれあい動物部」の部員たちが小学生19人にウサギやヤギ、ヒツジ、ポニーなどの扱い方や習性を伝授。ブラッシングや飼育小屋の掃除なども一緒に取り組んだ。

 月1回、小学生を高校に招いて動物にふれあってもらう「ふれあい動物園」。前身の小動物部時代から約20年間続けている。7月には児童たちも運営側に加わり、部員と一緒に動物を連れて地元の高齢者施設を訪問した。

 部が校内で飼育する動物は11種類約140匹。部員50人が交代で世話をする。気持ちよく触ってもらえるよう、ブラッシングやつめ切りを欠かさない。多くの人に興味を持ってもらうため、動物の生態や話題などネタの仕込みにも力を入れる。「活動を通じて、人と人のつながりを学んでほしい」と顧問の吉田文三教諭(55)。2年の山下滉生さんは「前は人としゃべるのが苦手だったけれど、小学生やお年寄りと接するうちに楽しくなった」と話す。

今治市立岡村小学校(愛媛県)/お年寄りを取材、「自分史」贈る

写真お年寄りの自宅を訪ね、取材する岡村小学校の児童ら=愛媛県今治市

 瀬戸内海に浮かぶ岡村島(愛媛県今治市)にある岡村小学校の児童は、01年から島のお年寄りを取材し、「自分史」の冊子を手作りしてプレゼントしている。贈った人数は合計で31人になる。

 今年の全校児童数は11人。6月、2班に分かれて78歳の男性と81歳の女性を取材した。小学生時代の運動会や遠足の思い出。若い頃に子どもに飲ませるミルクが手に入らず苦労したこと……。7月、学校に招待し、2人のこれまでを寸劇にして発表した。

 校区の岡村島、大下島、小大下島の3島は過疎化が進み、中学生までの子どもは50人に満たない。島民は子どもたちを「島の宝」と呼んで大切にしている。

 市社会福祉協議会の島崎義弘さん(47)は「お年寄りは子どもたちとの触れ合いで元気をもらい、自分の人生を振り返る貴重な機会になっている」。児玉健次校長(52)は「困難を乗り越えて生きてきたお年寄りの体験談は、モノが豊かな現代でも役に立つ話ばかり。きっと子どもたちの支えになるはずです」とほほ笑んだ。

出水市立荘中学校ツルクラブ(鹿児島県)/全校生徒でツルの数調査

写真出水市ツル観察センターで羽数調査に臨む生徒ら=08年11月、鹿児島県出水市荘

 ツルの渡来地として国の特別天然記念物に指定されている鹿児島県出水市で、半世紀にわたり越冬するツルの羽数調査を続けてきた。今でこそ毎冬1万羽以上が飛来するが、ツル保護監視員らの指導の下、生徒有志で調査を始めた1960年当時は438羽に過ぎなかった。62年、地元に鹿児島県ツル保護会が、66年には荘中学校にツルクラブが正式に発足し、地域ぐるみの保護活動が始まった。

 調査は11月から翌年1月にかけて毎年6回。週末の早朝、暗いうちから防寒着に身を包んだ生徒たちは4班に分かれ、フィールドスコープ(望遠鏡)や双眼鏡、ツルの数をカウントする計数機を手に、ツルのねぐらを取り囲むように配置につく。夜明けとともにツルが飛び立ち始めると、計数機のボタンを押し続ける。

 生徒数の減少に伴い、今は全校生徒19人全員がクラブ員だ。生徒会長の坂下智世さん(15)は「これまでで最高の羽数を数えたい」と意気込む。調査結果は、隣の市立高尾野中学校の調査と合わせ、県ツル保護会を通じ公表される。