朝日のびのび教育賞第12回(2010年度)

朝日のびのび教育賞・第12回贈呈式の様子など

狭山・学校支援ボランティアセンター(埼玉県)

地域で授業支援

写真生徒たちから感謝の花束を受け取ったSSVCのボランティアたち=狭山市立入間中学校

 地域が連携して取り組む教育活動を表彰する「第12回朝日のびのび教育賞」に狭山市の「学校支援ボランティアセンター」(SSVC)が選ばれ、2月10日、狭山市の市立入間中学校(江原昭二校長)で賞の贈呈式があった。市内26小中学校で定年後の元会社員らが授業を支援する活動が評価された。今後は大学生らのボランティアも募る方針だ。

 入間中での支援は今年度最終日にあたり、贈呈式前に3年生が「お礼の会」を主催した。生徒は「旅立ちの日に」など2曲を合唱。生徒代表の大町麻実さん(15)は「丁寧に教えていただき、苦手な教科が好きになった人もいる。今後の進路に生かします」と感謝の言葉を述べた。

 SSVCの井上治朗さん(74)は「みなさんと言葉を交わすことは私たちのエネルギーになる。入間中は素晴らしい学校だ」とあいさつした。

 贈呈式では、賞の選考にあたった山川富士夫・朝日新聞編集担当補佐兼教育専任ディレクターが「地域の皆さんが学校を支え、生徒を育てている」と評し、正賞の盾を坂井敬一・SSVCセンター長(76)に授与した。

 坂井さんは「これを契機に次の事業として、近隣の高校・大学と連携し、学生ボランティア部を立ち上げたい」と話した。高校5校と大学2校の参加を予定しているという。

(2011年2月11日朝刊埼玉県版)

外国人の子どものための勉強会(千葉県)

820人、学び巣立つ 松戸のNPOに朝日教育賞 外国人の子の勉強支援

写真朝日のびのび教育賞を受賞した「外国人の子どものための勉強会」のメンバーら=松戸市民会館

 地域と連携した優れた教育活動に贈られる「朝日のびのび教育賞」が2月26日、松戸市のNPO法人「外国人の子どものための勉強会」に授与された。

 勉強会は1996年から始まった。以来、会のボランティアたちは、松戸市に移り住んできた外国人の子どもに日本語を教えるだけでなく、勉強や進学指導も行ってきた。ここで学んで巣立った子どもたちは、約820人にのぼる。

 松戸市民会館で開かれた贈呈式には、会のメンバーや勉強している子どもたち、会のOBら約50人が出席。主催の朝日新聞社と後援のベルマーク教育財団から、盾と副賞が贈られた。

 贈呈式では、朝日新聞東京本社の杉浦信之・報道局長が「子どもたちはここで日本語を教えてもらうだけでなく、それを通じてどう生きていくかを学んでいる。学校や家庭ではできない仕事。こうした活動を全国に広めて欲しい」とあいさつ。来賓の本郷谷健次・松戸市長も「市や行政が対応するのが基本だが、なかなかできないことをこうしたNPOや地域が支えてくれている。これからも支援していきたい」と述べた。

 子どもたちの代表としてあいさつした会のOBの千葉工業大2年ゴメス・ケンジョさんは11年前にペルーから来日した。「ここで日本語を学び進学もできた。色々な国の人とも友達になれた。今回の受賞は誇りに思う」と話した。

 最後に、会の海老名みさ子理事長が「外国から来た子はみんな元気。でも日本での生活の情報が少ない。これからは(そのエネルギーを生かせるように)私たちの会だけでなく、様々な会や催しなどに参加できるよう情報を提供していきたい」と締めくくった。

(2011年2月27日朝刊ちば首都圏版)

大阪府立松原高校「るるくめいと」(大阪府)

エイズ知識出前講座

写真正賞の盾を受け取る「るるくめいと」のメンバーたち。1期生から10期生までがそろって受賞を喜んだ=松原市三宅東3丁目の府立松原高校

 地域と連携した優れた教育活動を表彰する「第12回朝日のびのび教育賞」を受賞した大阪府立松原高校(松原市)の「るるくめいと」への贈呈式が3月12日、同校であった。

 「るるくめいと」は中学や高校などに出向いての「出前講座」で、エイズの正しい知識や予防法を伝えるとともに、感染者への偏見をなくすことに取り組む校内の自主活動グループ。「知る・考える・動く」から1文字ずつ取って「るるく」と名付けた。寸劇やクイズを交えた出前講座は「大人が教えるより効果が大きい」と評判で、この10年で通算100回を超える。

 審査では、活動の独自性とその意義が高く評価され、全国で応募・推薦のあった92件から選ばれた。

 贈呈式では、朝日新聞大阪本社の越智洋子・お客様担当部長が正賞の盾と活動奨励金30万円、ベルマーク教育助成財団が副賞20万円を贈った。1999年に活動を始めた1期生をはじめ多くの元メンバーが集まり、受賞を喜んだ。久保井玲愛(れあい)さん(3年)は「将来はソーシャルワーカーになり、見えないところで差別されている人を一人でも多く救いたい」と語った。

(2011年3月12日朝刊大阪市内版)

ナチュラル・リサイクル・コーポレーション(広島県)

自立心養い、地域一体

写真朝日新聞大阪本社の渡辺雅隆編集局長(左)から正賞の盾を受け取るNRC企画開発課長の清水光司君 写真今年度の活動報告をする株主総会。贈呈式後に開かれた

 第12回「朝日のびのび教育賞」に決まった「ナチュラル・リサイクル・コーポレーション(NRC)」への贈呈式が2月16日、尾道市立原田中学校(吉田弘司校長)であった。NRCは全校生徒12人でつくる模擬会社。会社の形にすることで自立心を養い、伝統の腐葉土づくりや販売を通じて幼稚園や小学校、地域の人々も一体となって社会貢献に取り組んできた。

 原田中は、市内の中心部から北へ約10キロの中山間地にある。この日の贈呈式には、NRC社員の生徒らに加え、近くの原田小の児童、原田幼稚園の園児、保護者、株主ら約150人が出席し、晴れの舞台を見守った。

 朝日新聞大阪本社の渡辺雅隆編集局長が「お客さんに満足いただけるように努めるなど、みなさんはいつの間にかそうしたことを身につけているのが素晴らしい。どんどん自信をつけて、後輩たちに引き継いでもっともっと素晴らしい会社に育てていってほしい」とあいさつ。NRC企画開発課長の清水光司君(3年)と営業販売兼生産課長の新良貴華江(しらきはなえ)さん(同)に正賞の盾と活動奨励金副賞30万円を贈呈した。

 ベルマーク教育助成財団からの副賞20万円は、やはり財務課長の内海望実(うつみのぞみ)さん(同)が受け取った。

 社を代表してのあいさつは当然、社長の古藤文乃(ことうあやの)さん(同)。「これからも、私たちNRCはお客様の気持ちを考えて腐葉土を生産・販売し、いろんなアイデアを出し、地域や保護者のみなさまへの感謝の気持ちを忘れず活動を進めていきたい」。しっかりとした口調だった。

 NRCは2005年に設立された。出資者は地元の人たちで、1株100円。企画開発、生産、営業販売、財務の4課からなり、生産課には全社員が所属する。腐葉土販売のほかに、腐葉土で育てた葉ボタンを持って地域のお年寄りを訪ねるなどの活動を続け、「社会貢献」の社是を実践している。

 贈呈式後には株主総会があり、次期役員を承認した。株主の平藤進さん(76)は「子どもを見ると、私たちも元気がわいてきます。地域で子どもを育てると同時に、地域の励みにもなっている。頑張ってほしい」と喜んでいた。

(2011年2月17日朝刊備後版)

直方谷尾美術館(福岡県)

「スタッフ経験生かし頑張る」

写真記念の盾を受け取る渡辺祐輝君=直方市

 地域と連携した優れた教育活動を表彰する「第12回朝日のびのび教育賞」に選ばれた直方市の直方谷尾美術館への贈呈式が2月6日、同館であった。子どもたちが様々な創作活動に取り組む催し「子どものための美術館」が評価された。

 子どものための美術館は、公募に応じた「子どもスタッフ」が同館所蔵品約2千点から1人1点を選んで展示するもの。作品について文献で調べたり、作家に手紙で質問したりして解説をまとめる。今年も3月21日まで開いている。子どもスタッフは地元の名物を題材にした絵を描き、商店街に展示もしている。

 式には向野敏昭市長や子どもスタッフら約40人が出席。朝日新聞西部本社の宮川政明編集局長が「商店街や成人式で作品を飾り、地域交流を深めている。こんな活動が全国に広がることを期待します」とあいさつ。正賞の盾と活動奨励金30万円を、子どもスタッフの渡辺祐輝君(10)=新入小4年=らに手渡した。ベルマーク教育助成財団北九州事務所の田中正紀広報委員は、副賞20万円を贈った。

 盾を制作した前橋市の彫刻家三谷慎さん(57)は、盾の題材にしたフクロウが知恵の象徴であることに触れ、「手足を使い見聞を広めれば、いい知恵が浮かぶ。皆さんの活動がまさにそれに当たる」とたたえた。

 子どもスタッフを代表して、直方第二中3年の中原綾香さん(15)が「苦手だった人前での発表ができるようになった。高校でもこの経験を生かして頑張りたい」とこたえた。

(2011年2月7日朝刊筑豊版)

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【関連記事1】
子どもの創作、街づくり貢献 市民も喜び

写真アーケード街につり下げられた「ビッグフラッグ」=直方市 写真子どもたちの活動拠点となった直方谷尾美術館=直方市

 子どもたちが1年をかけて様々な創作活動に挑戦する直方谷尾美術館=キーワード=(直方市)のイベント「子どものための美術館」が、地域と連携した優れた教育活動を表彰する「朝日のびのび教育賞」に選ばれた。小中学生による「子どもスタッフ」を組織して街づくりに貢献したことも評価され、多くの関係者を喜ばせている。

 殿町、古町、須崎町の3商店街を貫くアーケードには、子どもスタッフが制作した「ビッグフラッグ」がつるされ、風に揺れている。縦2・5メートル、横2メートルの布が20枚。「竜王峡」「福智山ろく花公園」「びっくり市」など、直方の名所や名物が色鮮やかに描かれ、商店街に活気を与えている。古町商店街でブティックを営む谷川綾子さん(57)は「かわいいし、上手ですね。商店街がにぎやかになっていいと思う」と話す。

 フラッグが飾られて今年で4年目。元は子どもスタッフの活動の一環として美術館に飾られていたが、市職員の佐伯優さん(43)が「狭いところで、もったいない」と、商店街に飾ることを勧めたのが始まりとなった。

 現在飾られているフラッグは、4月に出される市第5次総合計画の冊子の表紙絵や挿絵として使われる。「オリジナリティーが高い冊子を作りたい」と、市側が昨春に制作を依頼。子どもスタッフたちは同年6月、メロン農家や特産の和菓子「成金饅頭(なりきんまんじゅう)」の販売店などを見学して題材を集め、「大好きな直方市」をテーマに絵を描いた。

 JR直方駅前の明治町商店街でも昨夏、子どもスタッフたちが絵付けをした風鈴が飾られ、猛暑にうだる市民を慰めた。同商店街はこれまでも、花火大会や夏祭りの巨大絵を描いてもらうなど、子どもスタッフとの交流を続けてきた。

 同商店街協同組合の神谷義信理事長(59)は、「美術館の内だけでなく外でも活動してもらえれば、我々も元気がもらえる」。受賞の知らせに「1人でも直方から著名な芸術家が出てくれれば、という思いで支えてきた。少しでも関われたことをうれしく思います」と話した。

 ◆キーワード <直方谷尾美術館>
 1913(大正2)年に開かれた奥野医院が90年に廃業した後、食肉販売会社「明治屋産業」の創業者、谷尾欽也氏が建物(40年築)を買い取り美術館に改装。谷尾氏の死後、遺族が直方市に建物と美術品を寄贈し、2001年4月に同市唯一の公立美術館として開館した。寄付されたコレクションは約1600点にのぼり、青木繁や児島善三郎など著名画家の作品もある。

(2011年2月6日朝刊筑豊版)

       ◆       ◆

【関連記事2】
パリの画家と直方の児童、共鳴 絵と詩、海を越えて互いに制作

写真松谷武判さんの「信号B」=直方谷尾美術館提供 写真松谷武判さん 写真松谷さんから届いた「星」の絵を掲げる宮城君

 福岡県直方市の直方谷尾美術館に先月、パリ在住の画家松谷武判(まつたにたけさだ)さん(74)から1枚の絵が届いた。同市立直方北小5年生の宮城光君(11)宛てだった。宮城君は、美術館にある松谷さんの絵を見て詩を書いた。感動した松谷さんが「今度はあなたの詩で、私が絵を描きましょう」と提案し、海を越えて響き合う制作が実現した。

 同美術館は、子どもが収蔵品から作品を選び、自分なりの方法で感想を表現する「子どものための美術館」を2005年から続ける。この事業は10年度の「朝日のびのび教育賞」に選ばれた。

 今年は3月21日まで開催中。「子どもスタッフ」として参加している宮城君は、松谷さんが1970年代に制作した版画「信号B」を選んだ。白と赤と青を基調に「信号を自分なりに変形させた作品」(松谷さん)だが、宮城君は「左右が非対称でおもしろいから」と選び、反時計回りに90度傾けて「海に沈む太陽」と見た。2年生から詩を作っており、学芸員の中込潤さん(37)の助言もあって感想を詩で表現した。

 「太陽はメラメラと燃えています/まるで赤いダイヤのよう/その時太陽はアチチと泣き、ダイヤは風になりました……」

 昨年10月に詩を受け取った松谷さんは「雄大な宇宙を感じた」という。「今度はこの子の詩に触発されて、自分が制作したい」と手紙をしたためた。宮城君はさっそく「星」という詩を書いて送った。

 「星は地球から見ると、ちっぽけなモノに見える/しかし、その星は宇宙に広がっている/宇宙では、ときに信じられない事が起きる……」

 「ぼくは空を見上げるのが好きなので、松谷さんも見上げるのかな、と思って作りました」と宮城君。

 1月12日に松谷さんから届いた絵は、黒い背景に銀色の星や干支(えと)のうさぎが浮かぶ。松谷さんが書いた宮城君の「星」の詩と、「宮城光君の詩を読んで私の宇宙を描いてみました」とのメッセージが添えられていた。

 「自分のイメージとまったく違い、こういう想像もあるのかと思いました」という宮城君は「将来は絵描きか、絵本作家になりたい」と思っている。松谷さんは「想像力を豊かにするために詩を書き続けてほしい」と話している。

 ■「信号B」を見て宮城君が作った詩
 
 海の中に消えようとする太陽がありました。
 その太陽をおおう雲がありました。
 海の中に沈む太陽は、目玉のようでした。
 上には青い空が広がっていました。
 その先には宇宙が広がっていました。
 そしてその中の一つに太陽がありました。
 太陽はメラメラと燃えています。
 まるで赤いダイヤのよう。
 その時太陽はアチチと泣き、ダイヤは風になりました。
 そして太陽は沈んでいきました。
 夜がきて、朝がきて、その繰り返し……。
 夜の間に皆は寝て、月が起きている。
 朝がきて皆は起きて、太陽も起きる。

(2011年2月8日西部本社夕刊)

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【関連記事3】
(いま ひと FUKUOKA)子どもの創作意欲導く 地域に考える契機を
「のびのび教育賞」の直方谷尾美術館学芸員 中込潤さん(37歳)

写真子どもスタッフが考えて作った「子どものための美術館」のマスコット「たにおくん」の前で=直方市

 ライオンの口から伸びた舌が、ネズミを捕らえている。小学校1年のとき、図画工作でそんな仮面を作った。

 今考えると、「ライオンの顔だけだと寂しいから、作っているうちにあれこれ足したのかな」。なんとも不思議な作品は、校内のコンクールで金賞に選ばれた。それ以来、中込少年は美術が大好きになった。

 そして今、直方谷尾美術館の学芸員を務めている。

 子どものころの体験が、今後の人生にどうつながるか分からない。だからいろんな経験をしてほしい――。そんな思いで支えてきた取り組み「子どものための美術館」が評価され、美術館は朝日新聞社の「朝日のびのび教育賞」を受賞した。「成果が目に見えにくい取り組みだけに、外部から認められたことは今後の励みになります」と喜ぶ。

 神戸市出身。美術好きがこうじて、徳島大学総合科学部で彫刻を学んだ。交際中だった妻が直方市出身だったこともあり、就職活動は福岡を拠点にした。当時、福岡・天神の街中には、「ミュージアム・シティ・プロジェクト」と称してさまざまな芸術家の作品があふれていた。

 「こういうところで活動できたら」。そう思い、福岡市東区のアパートに1人で住み込み、制作に励んだ。総菜店でアルバイトをしながら、木材やビデオテープなどあらゆるものを素材に作品を出し続ける日々。だが、なかなか認められなかった。

 筑豊地区の中学校で美術教員に欠員が出たことを知り、2000年1月から講師として働くことにした。しばらくしてこんな情報を耳にする。直方市の私立美術館が市に寄贈され、公立として再スタートするにあたって学芸員を募集している、と。

 中学校では、どうしても授業よりも生徒指導に時間が費やされてしまう。一方、直方市には妻の実家もある。なにより、美術館で働ける機会はそうそうない。心を決めて、面接を受けた。美術館が今のかたちになった01年4月から、学芸員として働く。

 「子どものための美術館」は、初代館長だった日高幸子さんのアイデアで05年に始まった。これまでに参加した「子どもスタッフ」は計58人。どの子も個性的で、まとめるのは大変だが、なるべく口出しせず、子どもたちの手でイベントを作り上げられるように気を配る。「大人が考えたものにならないように」との思いからだ。

 美術館の10周年記念として、宮若市出身の画家山喜多二郎太(1897〜1965)の作品展を7月に始めようと、準備を進めている。企画はすべて市民ボランティア4人が考えた。全員が60歳前後で、さながら「大人のための美術館」だ。

 「子どもに限らず、地域の人にいろいろなことを考えるきっかけを作る。それが、地方の美術館の役割なんだと思います」

(2011年2月13日朝刊福岡県版)