明日への環境賞


第1回
明日への環境賞

受賞の記録

Environment for tomorrow Prize

受賞の記録

アジア砒素(ひそ)ネットワーク
土呂久の教訓、アジアを支援

 つえを突いた青年の手足の皮膚は固くひび割れ、肝臓のあたりがはれていた。典型的なヒ素中毒の症状だった。1996年12月、アジア砒素ネットワーク(AAN)のバングラデシュプロジェクト責任者、川原一之さん(52)が、ガンジス川下流域のシャムタ村で目にした光景だ。

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井戸水の水質検査をするAANのメンバー=バングラデシュで
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建設途中の簡易水道の給水棟=04年5月、バングラデシュ・ジョソール県で

 原因は「井戸」にあった。村にある井戸約3百本を調べたら、9割以上から発がん性があるヒ素が飲用基準を超えて検出された。約3500人の住民の一割以上が中毒症状を示し、ていねいに診察した135人中23人は皮膚がんが疑われた。

 AANは宮崎県内の市民や医師らによって94年4月に発足した。母体となったのは土呂久公害の被害者を支援してきた団体だ。宮崎県高千穂町の谷あいにある集落で、鉱山から排出されたヒ素による被害が報告されたのは71年。水俣病やイタイイタイ病などに続いて公害病に認定され、裁判は15年におよんだ。

 90年に最高裁で和解した後、新たな活動の場として選んだのが「アジア」だった。当初は「日本の公害の教訓を伝える」つもりだったが、すぐに思い上がりに気付く。汚染はアジア各地に及び、ガンジス川下流域のインド側だけで二十万人以上の患者がいるとみられている。被害は今後もさらに広がる傾向にある。

 汚染の原因は、稲作かんがいの広がりによって大量の地下水がくみ上げられ、地層中に存在していたヒ素が井戸水に溶け出したため、と考えられている。

 AANのメンバーは現在約180人。バングラデシュ、中国・内モンゴル自治区、タイで集落を選び、医師や専門家、行政マン、学生など様々な分野の人たちが持ち味を生かし、現地の人々と協力しながら、被害者の救済や安全な水の確保などに取り組んできた。現地の人を主役に生活や技術に適した対策を取ってもらう、というのが信条だ。

 安全な水の確保は、21世紀の最大の環境問題の一つと言われる。公害の被害者を支援してきた地域住民が、体験によって得たノウハウを、海外で同じような被害に遭っている人たちの救済に生かす。日本にもそんな非政府組織(NGO)が生まれてきた。


(2000/03/05)



アジア砒素ネットワーク
活動開始時期 1994年4月
会員数 250人
現在の活動の概要および将来の予定
  1. トヨタ財団の助成を受けて、アジアの砒素汚染地(日本、中国、ベトナム、カンボジア、ネパール、ミャンマー、バングラデシュ、インド)を結ぶネットワークづくりを展開
  2. 中国、内モンゴル自治区正藍旗で環境再生保全気候地球環境基金の助成を受けて、砒素汚染調査と環境改善事業を実施
  3. バングラデシュのジョソール県内ケシャプール郡パジオユニオンで独自資金によるプロジェクトを実施中
受賞後に新しく始めた取り組み
  1. バングラデシュの首都ダッカと活動地ジョソールに事務所を開いて定着型の活動を展開
  2. 2002年1月〜04年12月まで、バングラデシュのジョソール県シャシャ郡(人口30万人)でJICA委託の開発パートナー事業による砒素汚染の調査と対策のプロジェクトを実施
 「受賞その後」(2005年9月20日付朝日新聞より)
問い合わせ先
 〒880−0014 宮崎県宮崎市鶴島2丁目9−6みやざきNPOハウス208号
 TEL:0985-20-2201 FAX:0985-20-2286
ホームページアドレス
 http://www.asia-arsenic.jp/
連絡先メールアドレス
 aanm2201@miyazaki-catv.ne.jp
(2005/07)
◆その他の第1回受賞団体
* 霞ケ浦・北浦をよくする市民連絡会議(茨城県牛久市)
 流域住民が、地域の小中学校や企業、森林所有者、市町村などと連携し、水草のアサザ群落再生事業を中心に「百年後にはトキの舞う湖」をめざす多彩な活動を続けている。
* 藤前干潟を守る会(名古屋市)
 ごみ処分場計画を中止させ、日本一のシギ、チドリ類の飛来地、藤前干潟を守った。行政のごみ政策転換と公共事業見直しの大きな契機となった。
【農業特別賞】木次(きすき)乳業有限会社(島根県木次町)
 「有機農業と食の安全性」という理念を掲げ、典型的な中山間地で、低温殺菌牛乳の生産を中核として、地域の生産・加工・流通・消費をつなぐ、経営的にも安定したネットワークを築いた。
【森林文化特別賞】特定非営利活動法人 地球緑化センター(東京都中央区)
 中国・内モンゴル自治区と長江流域への植林ボランティア派遣や、国内の過疎地に希望者を送り込む「緑のふるさと協力隊」などの活動で着実な実績を上げている。