明日への環境賞

明日への環境賞


第7回
明日への環境賞

受賞の記録

Environment for tomorrow Prize

受賞の記録

宍道湖・中海汽水湖研究所
干拓・淡水化の中止へ道筋

 日本海につながる汽水湖の宍道湖(島根県)と中海(島根、鳥取県)は37年間、農水省の干拓・淡水化事業によって揺れ続けた。

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中海に設置された中浦水門(手前)も、干拓中止によって撤去された=05年12月、鳥取県境港市上空で、朝日新聞社機から

 食糧増産を目的にしたが、まもなく政府はコメの減反政策に転換する。にもかかわらず、事業は続く。全国的に「無駄な公共事業」批判が高まるなか、00年にようやく当時の与党が政府に中止を勧告した。

 中止に追い込んだのは、社会情勢の変化と世論だ。世論づくりに大きな役割を果たし、住民運動に科学的な根拠を示してきたのが、宍道湖・中海汽水湖研究所だ。設立は89年。運動に携わる住民が漁師や研究者とともにつくった。現在、会員400人のうち300人は宍道湖の漁師たちだ。

 理事長の保母武彦さんは地方財政論や地域経済学の研究者。設立時、「将来、事業が中止されると環境の復元と保全が問題になる」という見通しを持っていたという。その通り、これまでの工事で影響を受けた自然をどう修復するかが新しい課題になっている。

 論議になったのは、干拓用につくった二つの堤防の開削だ。堤防を切り、海水を循環させることが二つの湖の回復には欠かせない。研究所はそう主張した。農水省は、開削しても中海の水質には「大きな変化はない」という立場だったが、最終的には1カ所の開削を決めた。実際に開削されると、研究所は水質測定を始める。水質の改善が確認できれば、もう一つの堤防の開削も求めたいという。

 昨秋、両湖はラムサール条約の登録地に決まった。かつて中海で多くとれたサルボウガイの復活、宍道湖の漁業振興、ラムサールの目的である保全と「賢明な利用」。そんな活動を続けていく。

 それは、持続可能な地域振興はどうあるべきかを探ることでもある。

 <宍道湖・中海の干拓・淡水化事業>
 63年に始まり、中海に5カ所の干拓地をつくり、両湖を淡水化して干拓地と周辺の農家に農業用水を供給するという事業。4カ所は完成した。1700ヘクタールと最大面積の本庄工区の干拓と淡水化が焦点になり、反対運動の高まりの中で干拓は6年前、淡水化は3年前に中止が決まった。試算では、計850億円が使われ、あと450億円で完成という段階だった。


(2006/04/14)


財団法人 宍道湖・中海汽水湖研究所
活動開始時期 1989年12月
会員数 400人
問い合わせ先
 〒690−0049 島根県松江市袖師町99 内藤ビル203
 TEL:0852−21−8683
 FAX:0852−21−8683
(2006/04)
◆その他の第7回受賞団体
*財団法人 知床財団(北海道斜里町)
海陸にまたがる厳しく豊かな生態系を科学的に調査し、保護管理の現場の最前線で活動を続ける。「知床」の世界自然遺産登録にも多大な貢献をした。
*特定非営利活動法人 グラウンドワーク三島(静岡県三島市)
富士山の豊かな水系に位置する三島を、幅広い市民の力を束ねることによって、 長期間にわたる環境悪化から蘇らせ、新たな水環境の創造に成功している。
*矢作川漁業協同組合(愛知県豊田市)
きれいな水とアユの復活を通じて、人と川とのあるべき関係を取り戻す努力を続け、ダムで分断された川の環境改善に関するモデルケースとなっている。
*特定非営利活動法人 農と自然の研究所(福岡県二丈町)
虫や草花などの観察を通して、田んぼが自然環境に果たす役割を示し、稲作に携わる農民を環境保全の担い手として育てるため、尽力している。