明日への環境賞


第8回
明日への環境賞
Environment for tomorrow Prize

受賞の記録

屋久島・ヤクタネゴヨウ調査隊(鹿児島県上屋久町)
希少な松、「戸籍」作り把握

 屋久島は1993年、広範囲にわたって世界自然遺産に登録された。人々の視線は有名な屋久杉に向けられがちだが、調査隊代表の手塚賢至さん(54)は「島のすばらしさは生態系の豊かさにある」と話す。

 島の西部地域には、海岸部から山頂部まで、亜熱帯から亜高山帯までの植物が垂直分布している。だが、足元には絶滅危惧(きぐ)種も数多い。その象徴的な存在がヤクタネゴヨウだ。

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06年12月、レーザー距離計などを使って分布位置を調べる調査隊メンバー=屋久島で

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03年、直径が2メートル近いヤクタネゴヨウの計測をする調査隊メンバーら(ヤクタネゴヨウ調査隊提供)=屋久島で
 調査隊の結成は99年。月1回の「全木調査」が活動の中心で、いわば樹木の戸籍をつくってきた。1本1本の生存木に番号をつけ、分布位置や樹高などのデータを蓄積している。種の保全には種の現状を正確につかむことが不可欠だと考えて始めた。すでに約1200本の調査を終えた。
 ただ、ヤクタネゴヨウの生息地は生半可な場所ではない。がけっぷちの尾根上や山中の険しい岩場などに限られる。傾斜が30度以上の急斜面でコンパス測量をしながら記録するのは骨が折れる。調査隊の会員は約150人いるが、全木調査の現場で動ける人がたくさんはいないのが悩みだ。
 活動では民・官・学の協働を心がける。調査データは森林総合研究所(茨城県つくば市)に送られ、専門家が分析して地図に落とす。蓄積データは学会などでも発表されている。
 02年9月には、種子島での自生地調査で140本の群生地を発見した。ところが、この群生地ではマツ材線虫病の発生も確認した。そこで民・官・学で連携して被害木を切って運び出した。その後も、絶滅危険度が高い種子島まで守ることを視野に入れ、松枯れ対策の専門家会議を開くなど取り組みを主導している。
 九州森林管理局の「ヤクタネゴヨウ増殖・復元緊急対策事業」にも全面協力した。国の天然記念物指定に向けた働きかけや公開シンポジウム、自然観察会の開催などにも取り組む。
 手塚さんは「ヤクタネゴヨウの種の存続も『がけっぷち』に立たされている。この活動がヤクタネゴヨウの保護と屋久島の本当の豊かさを考えるきっかけになってほしい」と願う。

<ヤクタネゴヨウ>
 その名の通り、屋久島と種子島の2島にのみ自生する五葉松。最大で胸高直径2メートル以上、樹高30メートル以上に達する。日本に自生する8種のマツ科マツ属の樹木で唯一、絶滅危惧種として日本版レッドリストに掲載されている。明治時代以降は丸木舟の用材として伐採され、1918年の記録では400隻以上に使われていたという。近年はマツ材線虫病(いわゆる松くい虫)の被害が種子島で深刻だ。生息本数は、目視による調査で、屋久島で1000〜2000本、種子島で約300本と推定されている。

(2007/04/13)



◆その他の第8回受賞者・団体
*山本純郎氏(北海道根室市)
絶滅の危機にあるシマフクロウを守るため、長年にわたり生息環境の整備や啓発活動に取り組んできた。1994年に世界初の人工孵化を成功させるなど、保護・増殖活動の輪を広げている。
*特定非営利活動法人 シナイモツゴ郷の会(宮城県大崎市)
東北地方の淡水魚シナイモツゴの保護を中心に、ため池、小川、田んぼで成り立つ日本の原風景と生態系を取り戻す活動に取り組んでいる。
*財団法人 公害地域再生センター(あおぞら財団)(大阪市)
次の世代に青空を手渡したいとの思いから、大気汚染公害訴訟の和解金をもとに設立した財団を拠点に、国や企業に働きかけながら地域の環境改善に取り組んでいる。