朝日舞台芸術賞

第6回(2006年)受賞者(敬称略)

■舞台芸術賞 


寺島しのぶ「最大級のうそつきたい」


 「書く女」(永井愛作・演出)で樋口一葉の、短くも濃密な日々を演じた。
 「小さな役まで生き生きしている厚みのある永井作品に魅力を感じて」、台本ができる前に出演を決めた。だが、けいこが始まっても台本は完成しない。
 「初めて不安で眠れないという体験をしました」
 3時間を超える上演中、休む暇はない。舞台上でエネルギーがどんどん減るのを感じ、引っ込んだ瞬間に栄養ゼリーを流し込んで緊張を持続させた。
 「あれ以上過酷な舞台はなかった。やり遂げたのは奇跡」と笑いながら振り返る。それだけに、満員の観客が「何よりうれしく、励みになった」と言う。
 手応えも大きかった。
 「覚えるのは大変でしたが、せりふが体にしみこむ感じもした。一葉さんに共感できたからじゃないかな。女性の強さ、潔さ、残酷さなどを併せ持つ一葉は永井愛でもあり、寺島しのぶでもあるのでしょうね」
 役の人物を「分かりたい」気持ちが演技の出発点。「どうすれば一番シンプルにその人に見せられるか、かみ砕いて考えているうちに、役の人間になってゆく。そうすれば、最大級のうそがつけるし、お客さんも、自分もだますことができる。新しい作品の度に『また違う寺島』と思ってもらえたら、うれしいな」

〈てらじま・しのぶ〉 72年生まれ。93年から「グリークス」「新・近松心中物語」など多くの舞台に出演。03〜04年は映画で10を超す主演女優賞を獲得。



受賞の記録

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主催:朝日新聞 後援:テレビ朝日