朝日舞台芸術賞

第6回(2006年)受賞者(敬称略)

■グランプリ 「時のなかの時−とき」


山海塾主宰・天児牛大「劇場の不可思議さ、出発点」


「対話」が誘う自己発見 


 舞踊作品として初のグランプリに輝いた「時のなかの時――とき」は、舞踏カンパニー「山海塾」がパリ市立劇場、北九州芸術劇場と共同で制作した。砂が敷かれ、7枚の黒い板が扇状に立つ舞台で、全身を白く塗った男たちが舞う。
冒頭、中央に横たわった4人が天に向けてゆっくり脚を伸ばす。幾何学文様の動くオブジェ、あるいは浄土に咲くハスの花にも見える鮮烈なイメージ。簡素で象徴的な装置、緊張と弛緩(しかん)を繰り返す抑制した動き、そして瞑想(めいそう)的な音楽が、静けさと美しさに満ちたミクロコスモスを作る。
「私たちと観客の間に言葉は介在しないけれど、むしろ介在しないからこそ想像が広がり、対話が生まれる。作品は見る人との対話によって“生かされる”のだと思う。その対話が、自己発見のきっかけにもなってくれれば素晴らしい」と、山海塾主宰の天児牛大は話す。
振り付け、演出、デザインを担当。自らもソロを踊り、光を放つかのような圧倒的存在感を見せた。「劇場というものに感じる不可思議さが、この作品の出発点」という。
「外の光と音を遮断した空間で、日常と異なる時間が流れる。そして次の公演が、また別の時空を展開し消えていく。都市の中にいくつも点在する、日常の中の異空間、“時のなかの時”を入れ子のように作品のうちに込め、劇場へのいざないのつもりで作った」
拠点とするパリでの初演は05年12月。山海塾を設立して30周年の節目だった。「うちのようなデラシネ(根無し草)カンパニーがよくもったと思う。共同制作を申し出てくれる劇場には、毎回『バクチですよ』と言う。何も形がないものに賭けるんですから」
40カ国、のべ700都市で公演を重ねてきた。その年の優れた舞台芸術に与えられる英国のローレンス・オリビエ賞を02年に獲得、国際的評価も高い。
次の新作は08年5月に発表する予定だ。
「異なる文化の中に身を置き、触れることが大事だ。文化は違うが肉体は共通。その差異と普遍性が、自分の中で常に揺れ動いている。それを感じつつ、作品と向き合っていきたい」


〈あまがつ・うしお〉 49年生まれ。75年に山海塾を設立、81年からパリ市立劇場を創作の拠点とし、2年に1作のペースで新作を発表している。主な作品に「金柑少年」や「闇に沈む静寂――しじま」「遥か彼方からの――ひびき」など。



受賞の記録

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主催:朝日新聞 後援:テレビ朝日