朝日舞台芸術賞

第6回(2006年)受賞者(敬称略)

■特別賞 


小幡欣治/書いて57年「もっと高く」


 最新作「喜劇の殿さん」民芸公演後の夜。長いせりふと格闘した古川ロッパ役の大滝秀治に声をかけた。「あなたを楽さしてはいけない。こういうひどい目にあわせて長生きさせたい」。「うそつけ」。81歳になる大滝が笑った。
 戦争協力した喜劇スターの栄光と悲惨を、骨太に描く力作だった。「ロッパの日記を読むと、多くの戦意高揚劇をやりながら、戦後はその反省がへんりんもない。でもけろっと忘れたのは、皆同じでないか」
 出発は新劇。初期作「畸型(きけい)児」は、社会への怒りがうっ屈する。「下積みの若者に自画像を投影させた。書いた物を振り返るとすべてコンプレックスの産物。僕は今でも幸福ではない」
 菊田一夫に信頼された。30年余、「あかさたな」「恍惚(こうこつ)の人」「喜劇 隣人戦争」と東宝現代劇の屋台骨を支える。菊田の世界はショックだった。「男女の愛の物語で舞台が成立している。マスターしようと思った。でも商業演劇はスターに見せ場を用意し、結末も暗くてはいけない。もう自由に書きたい」
 母なる新劇への回帰。民芸への新作は6本になる。「最近はこれが最後と言い聞かせながら書いている。『熊楠の家』では、人間を追究すると、いつのまにか環境問題にぶつかった」
 57年の劇作活動で、脚色を含め戯曲は100本を超す。「恥ずかしい。代表作なんてないよ。でも書くならより高い所へいきたい」

〈おばた・きんじ〉 28年生まれ。56年に「畸型児」で新劇戯曲賞(岸田国士戯曲賞)を受賞。60年代から東宝現代劇に「三婆」などを書き、演出する。94年から「熊楠の家」(菊田一夫演劇賞特別賞)など新作を劇団民芸に書く。 。



受賞の記録

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主催:朝日新聞 後援:テレビ朝日