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「絵空事(ファンタジー)だからこそ」できること
この度は、手塚先生の名前を冠する名誉ある賞を頂き、大変恐縮です。この10年、日本の抱えるストレスは肥大し続け、それに伴い漫画界ではファンタジーの裾野が広がり続けてきました。今や一番描き手の多いジャンルでしょう。逃避や癒しの効力を持つ領域として、それは必然なのかも知れません。ですが、特に青年誌においては最も社会的認知度の低いジャンルでもあります。子供やファンタジーファン、絵空事に門戸の広い人達にのみ向けて描くのならば、それで良いのですが一般の方に興味を持って頂くには、それでは足りません。人々の共通のツール、『人間』や『現実』をしっかり踏まえないと、一見(いちげん)さんを作品世界に誘(いざな)うのは難しいのです。最近はCGの目覚ましい発展で、ファンタジーにおいては、ビジュアルのみに重きが置かれる傾向があります。しかし、観る側を受動的にしてしまう映像メディアとは違い、漫画は読者の読むという能動性無くしては成り立ちません。臨場感の高い世界を表現できても、登場人物の心に臨場感や共感が持てなければ、元も子もありません。そして人間不在の物語に魅力を感じてもらえるはずがないのです。「絵空事(ファンタジー)だから」を免罪符にしないよう、また「絵空事(ファンタジー)だからこそ」できることを武器に、これからも微力を尽くしたいと思います。 |