手塚治虫文化賞

第6回マンガ優秀賞

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マンガ優秀賞

三浦建太郎 『ベルセルク』(白泉社)

《「絵空事(ファンタジー)だからこそ」できること》

 この度は、手塚先生の名前を冠する名誉ある賞を頂き、大変恐縮です。この10年、日本の抱えるストレスは肥大し続け、それに伴い漫画界ではファンタジーの裾野が広がり続けてきました。今や一番描き手の多いジャンルでしょう。逃避や癒しの効力を持つ領域として、それは必然なのかも知れません。ですが、特に青年誌においては最も社会的認知度の低いジャンルでもあります。子供やファンタジーファン、絵空事に門戸の広い人達にのみ向けて描くのならば、それで良いのですが一般の方に興味を持って頂くには、それでは足りません。人々の共通のツール、『人間』や『現実』をしっかり踏まえないと、一見(いちげん)さんを作品世界に誘(いざな)うのは難しいのです。最近はCGの目覚ましい発展で、ファンタジーにおいては、ビジュアルのみに重きが置かれる傾向があります。しかし、観る側を受動的にしてしまう映像メディアとは違い、漫画は読者の読むという能動性無くしては成り立ちません。臨場感の高い世界を表現できても、登場人物の心に臨場感や共感が持てなければ、元も子もありません。そして人間不在の物語に魅力を感じてもらえるはずがないのです。「絵空事(ファンタジー)だから」を免罪符にしないよう、また「絵空事(ファンタジー)だからこそ」できることを武器に、これからも微力を尽くしたいと思います。


《三浦建太郎》

 みうら・けんたろう。1966年、千葉県生まれ。高校時代、美術科の仲間達と漫画の研鑽を積む。85年、日本大学芸術学部在学中に「再び」で少年マガジン第34回新人漫画賞入選、商業誌デビューとなる。88年、コミコミ(白泉社)11月号第7回まんがスクールに「ベルセルク」(48ページ)が準入選となる。この「ベルセルク」は"プロトタイプ"として単行本第14巻に収録。89年、大学卒業後、月刊アニマルハウス(白泉社)にて『王狼』(原作・武論尊)を連載。同年同誌10月号にて『ベルセルク』第1話を発表。以後、『王狼伝』『ジャパン』(ともに原作・武論尊)を発表しながら、『ベルセルク』の執筆を続ける。その飛翔する創造力を武器にキャラクターの構築、ドラマの深み、世界観の確立、エンターテインメント性等において、他のファンタジーコミックの追随を許さず。02年6月末、『ベルセルク』は単行本第23巻を刊行。

※受賞者プロフィールは当時のものです。