手塚治虫文化賞

第8回マンガ大賞

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マンガ大賞

岡崎京子 『ヘルタースケルター』(祥伝社)

©岡崎京子/祥伝社

《日常の「性」「死」生々しく》

 89年の「pink」では、昼間はOL、夜はホテトル嬢、アパートではワニを飼う女性を主人公に、都市生活の浮遊感をポップに描き出した。94年の「リバーズ・エッジ」は、河原で見つけた死体を巡る、主人公の女子高生といじめられっ子の同級生、摂食障害のモデルらの物語を通じ、生の実感が乏しい現代の閉塞(へいそく)感をドライにとらえた。

 日常の一部として配置された〈性〉と〈死〉が、肥大し暴発する岡崎京子の世界。受賞作は、ただれて崩れていく主人公自身の肉体を舞台に、その主題をより重く、生々しく展開した。

 岡崎さんは、雑誌連載終了直後の96年5月、散歩中に車にはねられ重傷を負い、現在自宅で療養中。本作は事故以前の最後の連載作品で、03年初めて単行本化された。

 ファンには気がかりな回復状況だが、見舞客の話に笑い声をあげたり、車いすで外出したりできるようになり、本作の出版にあたっては原稿のチェックもしたという。

 単行本の帯には、連載当時、雑誌に岡崎さんが書いたこんな言葉が使われている。

 「いつも一人の女の子のことを書こうと思っている。いつも。たった一人の。一人ぼっちの。一人の女の子の落ちかたというものを」

◆すべての方に感謝の気持ち 弟・忠さん

 受賞に対し、岡崎さんに代わり弟の忠さんがコメントを寄せた。

        *

 このたびはこのような賞を頂き本人はもとより家族一同本当にビックリしております。

 もし姉だったらこの場で作品に携わったすべての方々に岡崎節で感謝の気持ちを伝えるのでしょうが、代筆で失礼いたします。皆様、ありがとうございました。

「ヘルタースケルター」から
© 岡崎京子/祥伝社

《あらすじ》

 きれいになりたい、幸せになりたい。その欲望を満たすため、全身を作りかえるほどの危険な整形手術を受けた主人公りりこは、完璧(かんぺき)な美貌(びぼう)を武器にトップアイドルへの道を駆け上がる。だが後遺症が悪化し、肉体は徐々に崩壊へ向かう。すべてを失う恐怖に駆られたりりこは、マネジャーのみちこら周囲の人間を巻き込んで、破滅へと近づいていく。

 単行本は祥伝社刊。


《岡崎京子》

 おかざき・きょうこ。1963年、東京都生まれ。跡見学園女子大学短期大学部在学中に成年誌デビュー。その後80年代〜90年代を通じてサブカル誌、漫画誌、ファッション誌に次々に作品を発表、時代を代表する漫画家として認知される。代表作に『pink』『ハッピィ・ハウス』『リバーズ・エッジ』など。自身の作品だけでなく「作家・岡崎京子」を考察する本や雑誌も多数出版されている。96年5月交通事故に遭い、現在はリハビリに励む日々。

※受賞者プロフィールは当時のものです。