手塚治虫文化賞

第8回特別賞

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特別賞

みなもと太郎 「歴史マンガの新境地開拓とマンガ文化への貢献に対して

©みなもと太郎/リイド社

《幕末の純情、編みあげて》

 坂本龍馬、西郷隆盛、高杉晋作ら風雲児たちが歴史を動かした幕末を描こうと、81年「風雲児たち」の連載を始めた。歴史とは不思議なもので、それには、ブッダと劉備玄徳がかかわっていた。

 「依頼してきた雑誌(『コミックトム』)に、手塚治虫さんが『ブッダ』を、横山光輝さんが『三国志』を連載していた。何で日本の大河ドラマがないの? なら僕がやろうか、と思って」

 ズッコケギャグを随所にはさんだ歴史群像劇は、幕藩体制の発端である関ケ原の戦いからスタート。「100ページほどで幕末に入るつもり」が延びに延び、龍馬が初めて江戸へ旅立つところで終わるワイド版「風雲児たち」(リイド社)は20巻約6千ページ。掲載誌を変え01年に始めた「幕末編」も4巻を超えた。

 「ラストは五稜郭陥落と決めているけど、一体いつたどりつけるのか。それを考えるとボーゼンとしてしまう」

「風雲児たち」から
©みなもと太郎/リイド社

 長くなった理由は「歴史があみ上げていく奇跡のような人間模様」。例えば序盤のクライマックスである「解体新書」出版の苦闘には、平賀源内や林子平が絡み、さらに彼らがかかわった人物たちが、後に出会って新たなドラマにつながる。

 「ノンフィクションや古典の解説書を読んで、面白そうなエピソードをつないでいったら、話がタコ足で広がっていく。こんなに面白い歴史を、学校ではどうしてあんなつまらなく教えられるのか分からない」

 前野良沢の情熱、平賀源内の悲哀、最上徳内の理知、林子平の一徹、大黒屋光太夫の不屈、吉田松陰の奔走……。鎖国日本の外に目を開いた信念の男たちの物語は、古典的といえるシンプルな絵柄で“オヤジの純情”をうたいあげる。

 「仕事はマンガ、趣味もマンガ」。マンガ批評家で、コレクターでもあり、杉浦茂さんやあすなひろしさんの作品の復刻出版に携わった。

 「ただ騒いでるだけですよ。『読みたいから出版してくれ!』『こんないいマンガがあるんだから読め!』って。次は貸本劇画の傑作選を出したい。好きなマンガの話なら一日中していられる。自分の作品の話をするのは苦手だけどね」


《みなもと太郎》

 みなもと・たろう。本名・浦 源太郎。1947年、京都府生まれ。67年「りぼん」に少女漫画でデビュー。70年「少年マガジン」に『ホモホモ7』連載。以後、本格的漫画活動に入り現在に至る。代表作『風雲児たち』『ふたりは恋人』『冗談新選組』『レ・ミゼラブル』など。生まれつきのマンガ好きで評論なども手がけ、漫画研究家としての著作に『お楽しみはこれもなのじゃ』がある。

※受賞者プロフィールは当時のものです。