<浦沢直樹さん(ひと)>
記憶に残る最初の漫画は手塚治虫の代表作「鉄腕アトム」。4歳の時に読んだアトムの名編「地上最大のロボット」だ。その作品をリメークした「PLUTO(プルートウ)」で、第3回の「MONSTER」に続く2度目の大賞を獲得した。
「心の真ん中に鎮座する」という原作に挑んだだけに、漫画界切っての人気作家も受賞に特別な感慨を抱く。
「描く時、いま手塚さんならどうするかと考えた。時事的なものを採り入れる人だから、米国とイスラムの対立なんてきっと描くはずだと思って原作を読むと、(敵役のロボット)プルートウは中東の王様みたいな人が製造している。原作にすべてがもう書いてある気がしました」
リメークは手塚治虫との真っ向勝負。プロデューサーの長崎尚志さんと共同でストーリーを練り、手塚の長男・眞さんが監修を務めた。アトムらロボットの戦いのドラマに国際政治謀略を絡めた硬質なサスペンスに仕立てた。
漫画の次に力を注ぐのはロックで、ライブも開く実力だ。息抜きはレコード磨き。往年の名盤を丹念にふき、虹色の光をよみがえらせる。
その喜びは、手塚漫画の「古典」に新たな命を吹き込んだ「PLUTO」と通じる。「今を追いかけるばかりで過去の遺産を忘れていいのか、という漫画の現状への思いがありましたからね」
(文・小原篤)
<手塚眞さんコメント>
浦沢さんからお話をいただいたとき要望したのは、父・手塚治虫に対し、変な遠慮をせずに真正面から真剣勝負をして欲しい、それと、浦沢さん自身の絵で描いてほしい、という二つでした。だから、最初に見せてもらったアトムのキャラクターがあまりに原作の通りなので、お願いして直してもらいました。
できあがった第1話は原作を生かしつつ、間違いなく浦沢作品になっていた。「これなら大丈夫」と確信しました。下書きを毎回見せてもらっていますが、「この物語は一体どこへ行くのだろう」と、楽しさといい意味での不安でドキドキしながら読んでいます。 |