手塚治虫文化賞

第9回短編賞

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短編賞

西原理恵子氏 『上京ものがたり』(小学館)『毎日かあさん』(毎日新聞連載)に対して

©西原理恵子/毎日新聞社「上京ものがたり」から
©西原理恵子/小学館

《体力続く限りどこまでも》

 「『毎日新聞』に連載持ってる人間にはくれないと思ってた。手塚治虫文化賞を狙う、と自分のマンガの中で書いたけど、あれはネタで、ホントに欲しかったわけじゃない。でも賞金を見て、それじゃあありがたく、って」

 毒とギャグのサイバラ節。だが「上京ものがたり」は、水商売のバイトをしながらマンガ家を目指す女性の鬱屈(うっくつ)と喜びが、驚くほど素直につづられている。

 「いつもの私の作品ならもっと乱高下が激しいんだけど、今回は奇をてらわず、自分の中の物語を思いつくまま出した」

 下積み時代は「上京」に、2人の子との暮らしは「毎日かあさん」に描いているが、ともに「自分の手を通過した時点で全部つくりごとになる。そんな当たり前のことが学校の先生には分からないのか、マンガのことで息子の小学校から呼び出しをくらいました」。

 携帯電話にダンゴムシをはさみ、ベランダから空へダイブしようとする息子の姿から、あることを学んだ。「男はまったく別の生き物。言葉は通じない。分かり合えない。男の子を育ててから男とつきあえばよかった」

 マンガによる旅行記のため、アマゾンで釣りをし、アジアの奥地へ分け入る。「商いは止まらない列車ですから。お客さんに喜んでもらえるなら、体力の続く限りどこまでも……正直、もうしんどいんですけど」

  ◇

 「上京ものがたり」は姉妹編「女の子ものがたり」と共に小学館から単行本(各1巻)が発売中。「毎日かあさん」は02年から毎日新聞の生活家庭面に連載中。単行本は2巻まで出ている。


《西原理恵子》

 さいばら・りえこ。1964年、高知県生まれ。武蔵野美術大学卒。同校在学中に88年、週刊ヤングサンデー『ちくろ幼稚園』でデビュー。『まあじゃんほうろうき』『恨ミシュラン(共著)』『できるかな』などで人気を博す。97年、小学館『ぼくんち』で文藝春秋漫画賞を受賞。主婦の日常をつづった『毎日かあさん(カニ母編)』で文化庁メディア芸術祭漫画部門優秀賞を受賞。現在、毎日新聞で『毎日かあさん』、ビッグコミックスペリオールで『女の子ものがたり』を連載中。

※受賞者プロフィールは当時のものです。