手塚治虫文化賞

第10回新生賞

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新生賞

ひぐちアサ『おおきく振りかぶって』(講談社)で、野球マンガに新たな表現の可能性を示したことに対して

©ひぐちアサ/
講談社

《筋書きは王道、表現は繊細》

 新設された硬式野球部が、甲子園を目指す。王道を受け継ぐ筋書きながら、「野球マンガに新風を吹き込んだ」と評価された。登場するのは、少女マンガに出てくるような繊細で、表情豊かなキャラクターたちだ。

 「ずっと温めてきた題材だった」という。小学生のころ「ドカベン」に夢中になった。高校生の時には、近所の公立高校が甲子園ベスト4に進み、胸を躍らせた。

 デビューは28歳と、遅咲きだ。高校生の同性愛を描いた「ゆくところ」が月刊誌アフタヌーンの四季賞(新人賞)に選ばれた。以後、家族のきずななど内面的な作品を描いてきた。

 だが「この『おお振り』の方が素で描ける」という。作品のため、5年ほど前から母校の野球部に通い詰めている。「選手たちが育っていく過程がすごく面白い。3年間で、顔から何から見違えるほど立派になっちゃうんですよ」

 手塚治虫文化賞には縁を感じる。「人生を変えた一言」を聞いたのは、第8回の贈呈式だった。式典後のパーティーで「アフタヌーン」の当時の編集長から、秋から「おお振り」の連載を考えていると告げられた。

 なぜ、高校野球か。「好きだからとしかいいようがない。いつか、甲子園に行けるといいな、と思いながら描いてます。どうなるかは私にも分からないんですけど」

「おおきく振りかぶって」から
©ひぐちアサ/講談社

《あらすじ》

 埼玉県立西浦高校は、軟式から硬式野球部になったばかり。トラウマを抱える投手の三橋、読みの鋭い捕手の阿部、天才肌の三塁手・田島らが一つのチームとしてまとまりながら、甲子園出場を目指す。単行本は講談社から6巻まで発売中。


《ひぐち・あさ》

©ひぐちアサ

 ひぐち・あさ 1970年、埼玉県生まれ。98年に「ゆくところ」でデビュー。単行本に「ヤサシイワタシ」(全2巻)、「家族のそれから」。

※受賞者プロフィールは当時のものです。