手塚治虫文化賞

第11回マンガ大賞

第11回 | マンガ大賞 | 新生賞 | 短編賞 | これまでの受賞の記録

「今」盛り込みバレエ再開

「舞姫 テレプシコーラ」 山岸凉子さん作(メディアファクトリー)

©山岸凉子/メディアファクトリー

 70年代に一世を風靡(ふうび)したバレエマンガ「アラベスク」を完成させた後、「しばらくバレエのことを忘れていた」と山岸凉子さん。それが、89年にローザンヌ国際バレエコンクールで熊川哲也が日本人初の金賞を受賞したのを見て、「これでまた、バレエのマンガを描ける」とひらめいた。

 山岸さん自身、小学校時代の6年間、バレエを習っていた。費用もかかるから、母親に「やめなさい」と言われ、好きでたまらなかったのにバレエをやめてしまった。それでも「アラベスク」を描いた当時はバレエ経験が有利に働いたが、もう小学生時代の感覚は通じない。

 バレエ教室に何度も足を運び、びっくりするようなスタイルの少女が当たり前のように踊っていることを目の当たりにし、日本人の少女を主人公にすることを決めた。山岸さん自身もバレエを再開しており、今では180度の開脚まであとほんの一歩のところまで柔軟性を取り戻している。

 股関節の硬さに悩む主人公の六花(ゆき)、その姉で努力により天分を開花させた千花(ちか)、さらには六花の同級生で少年のようなダンサー空美(くみ)。厳しい母に優しい先生、児童虐待やいじめも絡み、少女マンガの王道とも言える成長物語を、手足の筋肉を伸びやかにとらえた繊細な線で描ききった。

 「体が出来上がらなければ何一つできないのがバレエ。バレエを知らない人にも、実際のバレエってこうなんだと納得させたい」と山岸さん。

 踊りだけでなく、バレエを取り巻く今の経済状況や最新の指導法などもふんだんに盛り込み、選考委員会でも大賞への異論はほとんど出なかった。

 六花の成長と同時に起こった悲劇の後の第2部は、今年秋にも連載される予定だ。


《やまぎし・りょうこ》

 札幌市生まれ。69年にマンガ家デビュー。初の本格的なバレエマンガ「アラベスク」で注目を集め、83年に聖徳太子を主人公とする「日出処の天子」で第7回講談社漫画賞を受賞。「舞姫 テレプシコーラ」は、第1部が00〜06年、雑誌「ダ・ヴィンチ」で連載された。

※受賞者プロフィールは当時のものです。