手塚治虫文化賞

第11回短編賞

第11回 | マンガ大賞 | 新生賞 | 短編賞 | これまでの受賞の記録

絵を変え濃い話聞き、4コマから新境地へ

「大阪ハムレット」森下裕美作(双葉社)

©森下裕美/双葉社

 大阪の下町を舞台に、濃厚で多彩な男女が、泣かせる人情ドラマをいくつも展開する。

 表題作の主役はヤンキーの中学生。ワシは死んだお父ちゃんの息子なのか、それともお父ちゃんが死んですぐに家に住み着いたおっちゃんの息子なのかとあれこれ悩む。性同一性障害に苦しむ男子小学生は、学校祭の劇でシンデレラを演じる。

 作者の森下裕美さんは「大阪ハムレット」を描く前は、「少年アシベ」など4コママンガを中心に活躍していた。それが、いきなりストーリーマンガ家へと転身を果たした。

 「40歳を過ぎてから急に生きる目的が見えなくなってしまったんです。マンガ家の人生はもう残り少ないのではないかと。どうしてもストーリーマンガを描きたいという衝動を止められなかった」と森下さん。

 絵も思い切って変えた。外見をデフォルメし、目つきが鋭かったり骨格のいびつな人物を多数登場させた。

 取材のために東京の仕事場を離れ、大好きな大阪の下町を歩き回ってスケッチを続けた。「5分ぐらい喫茶店に座っているだけで、ものすごい濃い話を聞けたりする。人間のエネルギーがすごい。マンガの背景は岸和田を中心に描きました」

 いい人も悪い人もどっさり出てくるが、絶対悪がいる勧善懲悪の話にはならない。「本当に悪い人間を描きたくないんです。世の中、悪い人ばかりではないというのを知ってほしいから」


《もりした・ひろみ》

 62年、奈良県生まれ。「英語教師」で82年にヤングジャンプ青年漫画大賞準入選。4コマ漫画が中心となり、「少年アシベ」はテレビアニメにもなった。「大阪ハムレット」は漫画アクションに05、06年に掲載され、文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した。夫はマンガ家の山科けいすけさん。

※受賞者プロフィールは当時のものです。