手塚治虫文化賞

第13回手塚治虫文化賞贈呈式

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第13回手塚治虫文化賞贈呈式

  • ◇日時 2009年6月5日(金)18:00〜20:00
  • ◇会場 浜離宮朝日ホール(東京都中央区築地5−3−2、朝日新聞東京本社内)
  • ◇主催 朝日新聞社
  • ◇参加無料
〈贈呈式〉
正賞と副賞の贈呈、受賞者のスピーチ
マンガ大賞
『大奥』(白泉社)よしながふみ
『劇画漂流』(青林工藝舎)辰巳ヨシヒロ
新生賞
丸尾末広『パノラマ島綺譚』(エンターブレイン)
短編賞
『聖☆おにいさん』(講談社)中村光
〈トークショー〉
Part1「よしながさんとここだけのおしゃべり」
よしながふみ(マンガ家)×三浦しをん(作家)
Part2「手塚治虫と劇画」
呉智英(評論家)×中野晴行(ライター・編集者) ※敬称略

<手塚治虫文化賞 4氏に贈呈>

 マンガ家の故手塚治虫さんの業績を記念する第13回手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の贈呈式が6月5日、東京・築地の浜離宮朝日ホールであった。受賞者らのトークショーもあり、一般からの招待客ら約300人が聴き入った。

 マンガ大賞は、男女の役割が逆転した異色の時代劇を展開するよしながふみさんの「大奥」と、劇画という新しい表現にかけた男たちを描く辰巳ヨシヒロさんの「劇画漂流」に贈られた。新生賞は、江戸川乱歩の小説を原作とした「パノラマ島綺譚(きだん)」の丸尾末広さん。短編賞は中村光さんの「聖(セイント)☆おにいさん」。

 受賞者には鉄腕アトムのブロンズ像と賞金100万円がそれぞれ贈られた。

<「完結まで書ききる」よしながさん 受賞スピーチ>

 受賞の喜びを語るマンガ家たちに関係者や一般からの招待客らが大きな拍手をおくった。

 女将軍と大奥の美男たちのドラマ「大奥」(白泉社)で大賞を受賞したよしながふみさんは「たくさんの人に支えられここまで来た。着物の柄やかんざしといった細かいものをきれいに描いてくれるアシスタントの皆さん、ありがとうございます」とあいさつ。「この作品はまだ折り返し点にも来ていない。完結まで書ききることが、この賞に報いることだと思います」

マンガ大賞を受賞した、辰巳ヨシヒロさん

 「劇画」の名付け親で、若き日の自分自身をモデルにした「劇画漂流」(青林工芸舎)で大賞を受賞した辰巳ヨシヒロさんは「偏屈なので、おめでとうと言われてもつれない返事をしていたが、実はルンルン気分でした」と語った。「手塚先生に初めて会ったのは中学3年のとき、漫画を投稿していた新聞社の座談会でした。先生の隣に座り、至福の3時間でした」

 あやしい幻想美に彩られた「パノラマ島綺譚」(エンターブレイン)で新生賞に選ばれた丸尾末広さんは、「実はこの作品は、別の出版社に『いらない』と言われたボツ原稿で、泣きつくような気分で載せてもらった。お世話になった方々が最近続けて亡くなり、ちょっと投げやりになっていたが、この賞でまた何とかやれるかなという気持ちになりました」。

 ブッダとイエスが安アパートで暮らすコメディー「聖☆おにいさん」(講談社)で短編賞に選ばれた中村光さんは「長く続けるつもりはなく連載を始めたが、面白いと言ってくれる読者の皆様のおかげで賞をいただけた。(作中の)ブッダも手塚先生の大ファンなので、きっと喜んでいると思います」


<受賞者交えトークショー、「マンガと劇画対立しない」>

 「劇画漂流」については、今回の審査委員で評論家の呉智英さんと、マンガ出版史に詳しいライター・編集者の中野晴行さんが「手塚治虫と劇画」と題して語り合った。

 「手塚さんが開発したマンガと、辰巳さんたちが生んだ劇画は対立する概念ではないとわかってほしい」と呉さんは切り出した。劇画はそもそも、物語を主軸とする大人向けの作品として誕生したが、子ども向けのマンガとの対比で「悪」とみられがちだったからだ。

 呉さんは、手塚さんが47年に発表し、戦後日本マンガの出発点とされる「新宝島」を「敗戦で疲弊しきった日本の新たな表現として、辰巳さんら当時の10〜20代に大きな刺激を与えた」と紹介。やがて登場した劇画に、手塚さんはライバル心を燃やして社会派の作品も描いたとして「手塚さんのマンガから発した劇画が、60年代後半に再びマンガと合流した」と分析した。

 一方、中野さんは「手塚さんもデビュー前の10代の頃は子ども向けでなく、同級生相手にマンガを描いていた。もしかしたら劇画を見て『自分が昔やっていたことに、やっと追いついたな』と思ったのでは」との見解を披露した。

 中野さんは、手塚さんも辰巳さんも初期に活躍した大阪の出版界の歴史も紹介。呉さんも、雑誌マンガ中心の東京と、貸本マンガ中心の大阪といったマンガ家をはぐくむ風土の違いなどを述べた。

 よしながふみさんと審査委員で作家の三浦しをんさんも登壇。「よしながさんとここだけのおしゃべり」として、創作のきっかけや工夫、作品への思いなどを語り合った。