手塚治虫文化賞

第14回手塚治虫文化賞贈呈式

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第14回手塚治虫文化賞贈呈式

  • ◇日時 2010年5月28日(金)17:30〜19:30
  • ◇会場 東京・築地の浜離宮朝日ホール(朝日新聞東京本社内)
  • ◇主催 朝日新聞社
  • ◇参加無料
〈贈呈式〉
正賞と副賞の贈呈、受賞者のスピーチ
マンガ大賞
『へうげもの』(講談社)山田芳裕さん
新生賞
市川春子さん『虫と歌』(講談社)
短編賞
『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)ヤマザキマリさん
特別賞
故米沢嘉博さん
〈トークイベント〉
「数寄とひょうげ――古田織部から現代へ」
対談=荒俣宏さん(作家)、竹内順一さん(永青文庫館長)

<山田芳裕さんらに手塚治虫文化賞を贈呈>

第14回手塚治虫文化賞を受賞した(前列左から)ヤマザキマリさん、山田芳裕さん、故米沢嘉博さんの妻英子さん

 マンガ家の故手塚治虫さんの業績を記念する第14回手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の贈呈式が5月28日、東京・築地の浜離宮朝日ホールであった。

 武将茶人の古田織部を描いた「へうげもの」でマンガ大賞に選ばれた山田芳裕さんに、鉄腕アトムのブロンズ像と賞金200万円が贈られた。

 新生賞は「虫と歌」の市川春子さん、短編賞はヤマザキマリさんの「テルマエ・ロマエ」、特別賞はマンガ評論家の故米沢嘉博さん(出席は妻英子さん)。それぞれ、ブロンズ像と賞金100万円が贈られた。

 織部や茶道具をテーマに作家荒俣宏さんと竹内順一・永青文庫館長のトークショーもあり、一般からの招待客ら約380人が聴き入った。


<「あの世で織部公に謝罪」マンガ大賞の山田芳裕さん>

マンガ大賞を受賞した山田芳裕さん

 第14回手塚治虫文化賞の贈呈式が28日、東京都内であり、受賞者らの個性あふれるスピーチに、関係者や一般の招待客から笑いと拍手が起こった。

 茶道を変革した戦国武将・古田織部を、物欲に突き動かされた型破りな奇人として描く『へうげもの』(講談社)でマンガ大賞を受賞した山田芳裕さんは、「今年は厄年なのに厄払いもせず、こんな大変な賞をいただけるとは思わなかった。あの世に行ったら、まず手塚先生にお礼を言い、織部公には謝罪をします」。

 はかなげな命とのふれあいを描いたファンタジー『虫と歌』(講談社)で新生賞に選ばれた市川春子さんは、札幌市の出版社に勤務しつつ創作を続けている。

 「初めて見た手塚作品は、小学生のとき体育館で見たアニメの『ユニコ』だった。何か輝くような不安のようなものを感じ、知的なざわめきを覚えた。あの時のみずみずしさを忘れずに、頑張っていきたい」

 古代ローマの技師が現代日本の風呂にタイムトリップする『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)で短編賞を受賞したヤマザキマリさんは、在住するリスボンから贈呈式に合わせ帰国した。「アイスランドの火山が噴火して飛行機が飛ばなかったら、シベリア鉄道に乗ってでも来ようと覚悟していた。16歳の息子が手塚先生の大ファンで、この賞に負けない素晴らしいマンガを死ぬまでに描くと約束を交わした。それを必ずまっとうしたい」

 SF・ギャグ・少女マンガなど幅広い評論活動で特別賞を受賞した米沢嘉博さんは、2006年に亡くなった。賞は妻の英子さんが受け取った。生前、米沢さんを「おにいさん」と呼んでいた英子さんは、「米沢に代わりお礼を申し上げます」と述べた後、「おにいさん、よかったね!」と言ってアトムのブロンズ像を掲げた。

<マンガ大賞『へうげもの』記念、荒俣さんと竹内さんがトークショー>

『へうげもの』について語る竹内順一さん(左)と荒俣宏さん

 作家の荒俣宏さんと陶芸に詳しい永青文庫館長の竹内順一さんが、マンガ大賞を受賞した山田芳裕さんの『へうげもの』(講談社)について「数寄とひょうげ――古田織部から現代へ」と題して語り合った。

 『へうげもの』は織部焼の生みの親とされる武将茶人、古田織部が主人公。茶道具に熱を上げる「数寄者」で、ひょうきんな「へうげ(ひょうげ)もの」として描かれている。

 トークショーではまず、竹内さんが「織部焼は流行を採り入れて何でもありの焼き物。その頂点に織部がいた」と解説。「『へうげもの』は自己表現が初めて解放された時代を活写している。巧みに史実を採り入れている」と評価した。

 荒俣さんは織部が表情豊かに描かれていることに触れ、「戦国時代は荘園から解放され、日本人が大きく変わった。そんな表情を表している」と述べた。

 続いて、作品に登場する場面の現実性を史実に照らして検討した。例えば織部がハート模様を使ったのぼりを掲げる場面。竹内さんは「のぼりまでは(使って)ないだろうが、あってもいい」、荒俣さんは「耶蘇(やそ)会が使っていたこともあり、ありえた」。ともに表現の大胆さをたたえた。

 最後は作品の今後の展開を語り合った。史実だと織部は徳川家康に切腹させられる。

 竹内さんは、家康が茶の湯に否定的な人物として描かれていることに注目。「お茶は金持ちが農民のような暮らしをする遊び。農本主義の家康は、都会人が農民の顔をすることを受け入れられなかった」と指摘した。

 荒俣さんは「家康は奔放な人物を排除し、武士を文化人にした」と受け、竹内さんが「その幕府に対して、(幕末期に)薩長は武器の近代性を認識した。そこまで予感させる展開になれば、すごいマンガになる」と述べて対談を締めくくった。